インターネットに接続しているPCに必須のソフトといえばアンチウイルスソフトなどのセキュリティ対策ソフトだ。いまだにファイル共有ソフト経由での情報漏えいが頻発し、ボットやフィッシング詐欺などの脅威が増え続けている昨今、無警戒にインターネットを利用することは、鍵をかけないで家を留守にするようなもので、危険きわまりない。
もちろん、危機感のある人はセキュリティ対策ソフトなどを導入しているのだが、特に初心者などではまだ危険性が認識されていなかったり、導入してもライセンスの更新を怠っていたり、PCの動作の妨げになるとしてセキュリティ対策ソフトを起動していなかったり、きちんと対策をしていないという人は意外に多いようだ。
OS側でもそれに配慮し、Windowsではセキュリティ対策ソフトやファイアウォールが動作していないと警告を発するようになっている。しかし、たくさんのセキュリティ対策ソフトが出回っていることで、なかなかどのソフトを選んでいいのか、分からないという人も多いだろう。
ここでは、マイクロソフトのセキュリティ対策ソフト「Windows Live OneCare」の解説をしつつ、セキュリティ対策ソフトを選択する際のポイントをご紹介したい。
セキュリティ対策ソフトは、ネットにつないでいるだけでPC内に入り込んでこようとするウイルスや、メールに添付されたウイルス、Webサイト閲覧中に入り込んでくるウイルスなど、さまざまなウイルスの攻撃からPCを守る、というのが目的だ。いわばPCのガードマンなのだ。
そのため、セキュリティ対策ソフトはシステムに常駐し、常に起動させておき、さらにウイルスの定義ファイルを更新して最新の状態に保っておく必要がある。しかし、ここで重要な点は、ほかのPC用ソフトとは大きく異なり、セキュリティ対策ソフトというのは「目立ってはいけない」という点だ。
たとえば毎日のウイルス定義ファイルの更新でいちいちメッセージを出し、ユーザーに操作を促していたら面倒だし、毎日のように「ウイルススキャンをしてください」などと警告を出されると、ユーザーは使う気をなくしてしまう。
ウイルス定義ファイルは自動で更新してほしいし、必要なウイルススキャンは自動でやってしまえばいい。いちいち許可を求める必要はなく、安全性を向上させるためにはガードマンは毎日巡回してくれていい。
しかし、単純にそう言いきれないのが、セキュリティ対策ソフトがウイルススキャンを行うと、PCの動作が遅くなり、普段の作業に支障が出てしまう可能性があるという点だ。ウイルススキャンでは、継続的にHDDへのアクセスが行われるため、どうしてもPCの動作には支障が出てしまう。そのため、PCを使っていないタイミングを見計らってウイルススキャンを行う、という方法がよく使われるが、こういうやり方だと、家庭ではありがちな「使わない時はPCの電源を切る」という場合になかなかウイルススキャンを行う機会がなく、PC使用中にスキャンが行われると動作が遅くなってユーザーの不評を買う――そんなジレンマに陥りやすい。
そもそも、インターネットが安全であれば必要のないはずのソフトが常に起動していることは、PCのリソースを圧迫する原因の1つではある。セキュリティ対策ソフトをオフにしたらPCの動作が目に見えて速くなった、というのであれば、ユーザーはますますセキュリティ対策ソフトを使わなくなってしまう。つまり、ポイントはユーザーの邪魔をしないという点なのだ。
では、OneCareはどうだろうか。まず、メモリ使用量が他のセキュリティ対策ソフトに比べて低いようだ。他社のセキュリティ対策ソフトからOneCareに乗り換えたところ、PC全体のメモリ使用量が1.45GBから1.17GBに急減したのだ。メモリ使用量が削減されていることで、ほかのアプリケーションをより快適に使えるようになる。
また、セキュリティ対策ソフトというのはWindowsの起動時間や他のアプリケーションの起動時間に影響を与えるのだが、これもOneCareは短い。Vistaの起動時間では他と比較して40秒近く、Internet Explorer 7の起動時間は1秒強、Word 2007の起動時間も1秒程度速くなっていた。1秒程度というと誤差の範囲内かもしれないが、実際に体感速度だけで考えてみると、今までよりもキビキビと起動するように感じられた。実はこの差が大きいのだ。
また、ウイルススキャン時の動作も軽快だ。前述のように、ウイルススキャンというのは非常に「重い」動作だ。HDDへのアクセスが続くため、どうしてもPCの動作に影響を及ぼすものなのだが、OneCareだとこの動作が軽快。
ちょっと驚いたのが、CPU使用率は筆者の環境では最大でも30%程度だった点で、それもほとんど一瞬だけ達したぐらいで、あとはおおむね数%〜20%程度で安定した。筆者の環境がクアッドコア環境だったせいもあるのかもしれないが、別のセキュリティ対策ソフトでは40〜50%に達することもあったため、CPU負荷は確実に低減している。
これはVistaに搭載されたLow Priority I/Oと呼ばれる機能を活用しているからのようで、スキャン中に別の作業が行われると、自動的にI/O優先度が「バックグラウンド」に下がり、ほかの作業を優先させるからだ。その分、スキャン時間は長くなるのだが、その間に別の作業をしていても支障がないため、特に問題にはならないだろう。負荷の違いこそあるものの、同様の傾向はWindows XPでも見られたので、OneCareは動作が軽快といって良さそうだ。
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