終身雇用制度の崩壊や離職率が増加している中、企業のエンプロイメンタビリティ(雇用しうる能力)が問われている。そこで今回は「会社のビジョン、戦略の浸透度に関する社員の意識について」をテーマに調査を実施。重要と考えられる会社のビジョンや理念、戦略が実際にはどの程度認知され浸透されているかを調べるとともに、それらが社員に浸透することにより、社員のモチベーションの向上、会社全体の一体感につながるかをレポートした。
今回の調査は1月19日〜1月20日で行い、全国1090人の会社員(会社経営・役員クラス11.19%、管理職(課長クラス以上)23.49%、一般社員59.17%、契約社員・派遣社員2.94%、その他3.21%)から回答を得た。また、調査に回答頂いた方が所属する会社の従業員数は、100人未満が38.81%、100人以上〜500人未満が20.55%、500人以上〜1000人未満が7.98%、1000人以上〜3000人未満が11.19%、3000人以上〜5000人未満が5.23%、5000人以上が16.24%であった。
会社のビジョン、理念、戦略として掲げられているメッセージや施策について社員全体のうち「知っている」という回答が67.06%、「知らない」という回答が32.94%となっていた。
また、それらの施策などを知っている人のうち、その施策内容を「よく理解している」のは34.06%、「まあまあ理解している」が59.23%となっており、おおむね理解している人は合わせて9割を超えていた。
これらの施策をおおむね理解している人のうち、会社のビジョンや理念、戦略について大変共感しているという人は18.91%、まあまあ共感しているという人は66.86%と約8割強が共感を覚えているのに対し、あまり共感できない(12.02%)、まったく共感できない(1.91%)と共感できていない人も14%程度存在している結果となった。
会社のビジョンや理念、戦略に共感を覚えている人のうち、それを実際の仕事に活かすことができ、行動もともなって人は約7割ある一方で、約2割の人はうまく活かせていないという現状が伺える結果となった。
一方、会社ビジョンや理念、戦略に共感を覚えないとする人が多く挙げていた理由は、会社のビジョンや理念、戦略などが社員のモチベーションを向上させるような内容になっていない(45.26%)、会社本位だから(41.05%)が多く、以下、会社ビジョンや理念、戦略等が自分の仕事内容に反映しづらい(27.37%)、会社内の上下関係や社員同士のコミュニケーション不足(25.26%)、会社がビジョンや理念、戦略等を社員に浸透させようとしていない(14.74%)、その他(8.42%)と続いており、会社のビジョン、戦略に関して会社側が社員に浸透させるための意識が問われる結果となった。
会社のビジョン、理念、戦略を「知っている」人が、会社内で実施されている具体的な施策として挙げたものとして多かったのは、社内コミュニケーションツールの利用(39.40%)、ビジョンや理念などが印刷されたツールの配布(35.29%)、定期的な研修(29.41%)、教育訓練プログラムの作成などによる教育活動(26.54%)であり、社内ネットワークの強化(18.47%)、プロジェクトワークによる教育活動(10.26%)、その他の施策(4.10%)と続いていた。一方で特に行っていない(19.56%)という回答もあり、会社のビジョン等を掲げているにもかかわらず、約2割の会社が具体的な施策は行っていないことが明らかになった。
また、以上のような施策は社員のモチベーションや会社全体の一体感を向上させる意味で、施策は「有効」と感じている社員は約6割いるのに対し、「有効ではない」と感じている社員も4割近く見られた。
施策を実施していない理由としては、施策を検討および実施するような社内体制が整っていないから(41.26%)が最も多く挙げられており、具体性のあるビジョンや理念、戦略といったものを特に掲げていないから(18.18%)、ビジョンや理念、戦略の浸透の必要性を会社が感じていないから(15.38%)、現在、検討中だから(15.38%)、その他(9.79%)と続いていた。施策を実施していない会社においては、施策実施体制の未整備やビジョンの具体性のなさなど、会社側がその内容や体制について見つめなおす必要性があることが伺えた。
また、各設問を通して役職別に会社のビジョン、理念、戦略へ対する意識や見解に有意な差があった。企業のエンプロイメンタビリティが問われる中で、会社として全社員にビジョン、理念、戦略を浸透させていく施策の実施が「雇用主としての魅力」の一つになると考えられる
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