ボストン発--低価格のノートPC開発に取り組む非営利組織「The One Laptop Per Child(OLPC)」は、開発中のマシンにLinuxを採用することになっている。だが、同OSもWindowsと同じ肥大化に悩まされていると、同プロジェクトを率いるNicholas Negroponte氏が米国時間4日に語った。
OLPCの会長を務めるNegroponte氏は、当地で開催中の「LinuxWorld Conference and Expo」で講演し、「小型で高速な軽量のシステムがないがしろにされている。Linuxも、いつの間にか肥満になり、エネルギーの大半が無駄な動きに使われるようになった人のようになってしまった」と語った。
OLPCでは2007年第1四半期に、500万〜1000万台のノートPCをインド、中国、ブラジル、アルゼンチン、タイ、エジプト、ナイジェリアの各国の子どもたちに配布したいと考えている。なお、Negroponte氏は昨年のWorld Economic Forumで、当初は2006年後半に配布を開始する見通しを示していた。同氏は、このプロジェクトが、世界の数十億人の子どもに、訓練不足の教師にはできないような教育を施すのに役立つことを願っている。「これらの子どもの少なくとも50%は、われわれが教育と呼ぶものとはほど遠いものしか受けていない」(Negroponte氏)
Microsoft会長のBill Gates氏は今年に入って、表示能力の高いもっと強力なマシンを使うべきだ、としてOLPCのノートPCを批判した。Gates氏は後から肯定的な見解も示したが、Negroponte氏はGate氏の意見にいら立ちを隠さなかった。
今回、Negroponte氏は「これは能力の低いコンピュータではない。小型軽量の高速コンピュータだ」と語った。しかも、この活動にはMicrosoftも参加している。「Microsoftとも常に話し合っている。同社には開発用の基板を渡すことになっている。そして、彼らが(このハードウェアをサポートする)Windows CEを開発することになっている。なのに、一体なぜ公の場で私を非難するのだろうか」(Negroponte氏)
このシステムは、500MHzで動作するAdvanced Micro Devices(AMD)製プロセッサと128Mバイトのメモリを搭載する。データの保存には512Mバイトのフラッシュメモリを使い、ハードディスクは使わないと、同氏は説明した。その他の部品のなかで最も高価なのがディスプレイだが、このノートPCに搭載される液晶画面は、太陽光の下では1110x830ピクセルの白黒モード、またその他の場面では640x480ピクセルのカラーモードと、2つのモードを使い分けられる。
Negroponte氏によると、あるディスプレイメーカーとの話し合いのなかで、大量生産の重要性が浮き彫りになったという。
「『ディスプレイの開発で協力を得たい。小型ディスプレイが必要だ。色が完全に均一でなくても、多少ドット抜けがあっても、あまり明るくなくてもいい』と伝えた。するとそのメーカーに、『色が完全に均一で、ドット抜けがなく、リビングルームでも使える明るさを実現した大型ディスプレイを製造するのがわれわれの戦略プランだ』と言われた」(Negroponte氏)
「そこで、『年間1億枚必要だったのに、それは残念だ』と伝えると、『そういうことであれば、戦略プランは変えられるかもしれない』と言ってきた。スケールが必要なのはそのためだ」(Negroponte氏)
当初のイメージでは、このノートPCには横の部分に手回し式のハンドルが付けられ、これを回すことで電力を確保できるようになっていた。しかし、Negroponte氏は、マシン本体にひねりの力が加わると悪影響が出るおそれがあることから、このアイデアを破棄した。その代わりとして、ペダルなど何らかの形の発電の仕組みをACアダプタに取り付けると、同氏は述べた。
「このラップトップにハンドルを付ける意見をいつまでも曲げなかったが、私が間違っていた。10才の子どもが使うとして、ペダルなら4才の弟や妹にこいでもらえるかもしれない」(Negroponte氏)
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