今週ラスベガスで、ついにPCへのビデオ配信が脚光を浴びることになる。
今週始まるComputer Electronics Show(CES)では、シリコンバレー、北京、欧州、ハリウッドから集まった各社の幹部が、長い間予言されていたエンターテインメントとコンピューティングの融合から利益を得る方法について語ることになっている。
彼らは、ロードショー作品や世界のあらゆる地域のニュース映像、ホームビデオ作品、「刑事コジャック」の再放送などが収められた巨大なビデオライブラリから選んだコンテンツを、コンピュータやテレビ、携帯電話で再生するという未来のビジョンの概略を明らかにする。
「政府が音頭を取っている。またとないチャンスだ」と、小売業界を追跡調査するNPD TechworldのアナリストStephen Bakerはいう。「ほかのことを考えるのは時間の無駄だ」(Baker)
Intelはラスベガスで大々的な発表を行う準備を整えている。同社CEO(最高経営責任者)のPaul Otelliniは「Viiv PC」を発表する予定だが、これは楽曲の保存やテレビ番組の録画、家族の写真やビデオの再生などを目的に考えられたデスクトップの開発に役立てようとする同社にとって最新の試みだ。情報筋によると、同社はViiv対応のセットトップボックスやテレビなどに加え、巨大エンターテイメント企業との提携も発表する計画だという。
またTexas Instruments(TI)やPhilips、携帯電話メーカー各社も、今年夏にドイツで開催されるFIFA World Cupがテレビ付き携帯電話の売上をどう押し上げるかについて講演を行う予定だ。
YahooのCEO、Terry SemelとGoogle共同創業者のLarry Pageは、同じ日にCESで基調講演を行うことになっている。従来、CESでは家電メーカー幹部が基調講演を行う場合がほとんどだった。しかし、ここ数年はネットワークやエンターテインメント、コンピューティング関連業界の各社もCESに顔を揃えるようになっている。
CESでエンターテインメント関連技術を売り込む小規模企業の1つがNavio(本社:カリフォルニア州クパチーノ)だ。同社は、少数の正規小売業者経由ではなく、数千カ所のウェブサイトを通じて一斉に楽曲やビデオを発売できるようにする「権利ベース」のWebサービスを開発した。
NavioのCEO、Stefan Roeverは、「情報配信サイトは相当数存在するが、小売業者の数は少ない。われわれはそれを分散させる。われわれのサービスを使えば、ファンサイトやブログから直接関連製品を購入できる」と語った。いまのところ、Navioは各音楽会社と契約しているが、近い将来映画会社との契約も発表する予定だ。
これらの新サービスが登場する背景には、大手映画会社各社が従来の姿勢を改め、新たな配信技術を受け入れ始めたという事情がある。一部の製作会社では消費者がテレビ番組や映画をダウンロードすることを認めている。
Microsoft会長のBill Gatesは4日にCESで基調講演を行う予定だが、同氏は以前、消費者が自ら放送局となり、自分で番組を選択するようになることから、それがケーブル各社や広告主にマイナスの影響を及ぼすことになると述べたことがあった。
それに対し、ケーブル各社はそうはならないと主張している。誰かがこれらすべてを整理して提供する必要があるというのが彼らの考えだ。そこで、彼らはさまざまな通信サービスやナビゲーション用ソフトウェアの開発のほか、各映画会社との従来の関係を通じた独自のペイパービュー用映画ライブラリの構築に追われている。
大手映画会社側でも独自の課題を抱えている。「Veoh Networks」や「Brightcove」のような新しいウェブサイトでは、才能ある無名の製作者がつくった映画を配信するためのサイトをつくることで、主流の映画プロデューサーに挑戦したいと考えているためだ。
ただし、こうした新サービスにも問題はある。それは、無名の製作者がつくった作品はつまらないものが多いということだ。
「100万本のビデオ作品があったとしよう。それをどうランク付けするのか。優れた作品をどうやってみつけるのか」とビデオ・オンディマンド用ソフトウェアを開発するObjectCubeの創業者、Jay Janarthananは言う。「世の中には800万ものブログが存在するのに、皆が同じ100のブログを見ているのはなぜだろうか」(Janarthanan)
また、法律上ならびに契約上のハードルもある。ObjectCubeの顧客の大半はアダルト向けのエンターテインメントを販売しているため、訴訟が発生した場合に備えて膨大な額の費用を準備しておかなくてはならない。
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