Janet Herliheyは昨年、11歳の息子が注意力欠如障害(Attention Deficit Disorder:ADD)と診断された際、それまで考えも及ばなかった治療法を受け入れる気になった。その治療法とは、子どもをビデオゲームで遊ばせることである。
Herliheyが、ADDの治療法として医薬品の代わりにビデオゲームを選んだ理由は、それがNASAの技術だったからだ。この技術は、SonyのPlayStation 2(PS2)用ゲームソフト「Ratchet & Clank」など、子供への悪影響が少ない市販のゲームで遊んでいる間に、子供が集中し、リラックスできるよう子供の脳を「調整」するのに役立つ。
「SMART BrainGames」と呼ばれるこのシステムは、基本的に、ヘルメット内のセンサーを使って、ゲームで遊んでいるHerliheyの息子の脳波を測定する。そして、PS2に接続されたコンピュータがゲーム内のストーリー展開に様々な変化を起こす。例えば、プレイヤーの集中力が高まってきたら、レーシングゲーム内の自動車の速度を加速させる、といった具合だ。
BrainGames技術は元々、NASAが飛行中のパイロットの集中力を向上させる目的で開発したものだ。カリフォルニア州サンディエゴに拠点を置くCyberLearning Technologiesが、2002年にこの技術の独占的ライセンス(使用権)を取得し、2003年に全体的な学習システムを開発し、特許を取得した。
BrainGamesには、簡単に頭に装着可能なヘルメットが付属している。このヘルメットには3つのセンサーが付いていて、それらのセンサーを通して脳波を測定する。脳波のデータは、プレイヤーの首に取り付けられ、PS2に接続されている、いわゆるスマートボックスに送られる。このスマートボックスは改造されたゲームコントローラで、30秒毎に脳からのリアルタイム信号の収集、または脳活動の様子の写真撮影を行う。その後、データは、ゲームのストーリー展開に影響を与えるプログラムで処理される。
例えばレーシングゲーム「Burnout」では、自動車の速度が調節される。子供の操作、集中力が最高潮に達すると、自動車の速度は毎時100マイル(約160km)に達する。しかし、子供が疲労を感じたり、集中力が低下すると、コントローラのボタンを同じ強さで押しても、速度は毎時70マイル(約110km)まで低下する。子供が自動車の速度を上げるには、ゲームに集中するしかない。
またこのシステムでは、ストレスも測定される。子供のストレスレベルが上昇し過ぎると、コントローラが振動するか、あるいはステアリング(ハンドル操作)機能が停止する。この警告により、子供は、過度なストレスを感じることなく、集中することを覚える。
「(子供たちは)単に(コントローラの)ボタンを押しているだけではなく、ゲーム展開に影響を与えるために席に座っているのだと感じることができる。子供たちは自分の生理機能を使っているのだ。彼らは完全な実体験のように感じることができ、ゲームに没頭する」とCyberlearning TechnologiesのCEO、Domenic Grecoは語る。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力