「携帯電話のファームウェアのバグ修正だけではなく、ウイルス対策ソフトのようなアプリケーションの更新も無線で自動的に行えるようにしていく」--携帯電話向けにネットワーク経由でソフトウェアの書き換えを行うシステムを提供する米InnoPath Softwareは4月25日、都内で記者会見を開催し、同社の共同設立者で会長兼CEOを務めるルオシェン・ペン氏が戦略を紹介した。
InnoPath共同設立者、会長兼CEOのルオシェン・ペン氏
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InnoPathは1999年に創業したベンチャー企業で、シリコンバレーに本社を置く。2003年10月にはNTTドコモのネットワーク上で、無線によるファームウェアの更新を開始した。同社によると商用サービスとして無線によるファームウェアの更新を行ったのはこれが世界初という。
携帯電話の高機能化に伴って、製品リリース後にソフトウェアのバグが見つかることが増えてきた。2001年にはNEC製端末などにバグが見つかり、対象端末をすべて回収する騒ぎも起きた。このときの回収費用が原因で携帯電話事業の業績が急激に悪化した企業も多い。こういった問題に対処するのが同社の製品というわけだ。
これまでに世界で4500万台以上の携帯機器がInnoPathのソフトウェアを搭載しているといい、日本の端末ベンダーとしてはNECやパナソニック モバイルコミュニケーションズ、シャープ、三洋などが同社のソフトウェアを利用している。「日本のOTAソリューション市場では90%のシェアを獲得している」(InnoPath副社長兼日本支社長の松田芳明氏)。同社のライバルとしては、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズに同様の製品を提供しているビットフォンがある。
ペン氏は「日本市場を最も重視している」と話す。欧米に比べて第3世代携帯電話の普及が早く、携帯電話の進化が進んでいる市場だというのがその理由だ。日本法人の人員はまだ十数名だが、今年中に倍増させる計画だという。
InnoPathが新たな成長事業として見ているのが、無線ネットワークを利用したアプリケーションの更新だ。3月にはIntelやMcAfeeと共同で携帯電話向けのウイルス対策ソリューションを発表している。同社のシステムを使うことで、ウイルス対策ソフトの定義ファイルだけでなく、コアエンジンのアップグレードも無線で行うことができるという。また、更新されたファイルの差分だけを配信するため、高速にソフトウェアを更新できるとしている。
携帯電話にもCabirなどのウイルスが発見されていることから、ウイルス対策ソフトを携帯電話に搭載する動きがある。たとえばNTTドコモはFOMA 901iシリーズにMcAfeeのウイルススキャンソフトを搭載している。しかし現在のところ、ウイルス定義ファイルはユーザーが手動でダウンロードしなくてはいけない。
InnoPathのソリューションを利用すると、アプリケーションベンダーは更新ファイルや新しいコンテンツをPUSH型で配信できるようになる。「自動的にアプリケーションを更新するだけでなく、ユーザーに更新案内の通知をして許可したユーザーだけがダウンロードするようにもできる」(ペン氏)。同社は3月に携帯電話のGUI(Graphic User Interface)を手がけるアクロディアと協力して、新しいユーザーインターフェースを無線で配信するシステムも発表しており、ウイルス対策ソフトだけでなく、さまざまなアプリケーションで利用できるとしている。
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