ある巨大なソフトウェアメーカーが、市場における支配的地位と巨額の資金を使って、競合他社を買収したり、市場から締め出したりしている。
この手の話はよく耳にするだろう。しかし今回の主役は、MicrosoftやOracleではなく、James Bondゲームや「The Sims」などのゲームソフトを専門に開発するElectronic Arts(EA)だ。
ビデオゲーム開発で世界最大手のEAは、ここ数カ月の間に、ライバル企業の事業を妨害したり、コンピュータゲーム業界の特定の分野における競争を阻害しかねない攻撃的活動を進め、同業界の反発を招いている。同社は先ごろ、欧州の大手ゲームメーカーで、自社と競合するUbisoft Entertainmentの発行済株式のうち、およそ20%を取得した。さらにその前には、NFL公認のプロフットボールゲームを独占的に開発できる権利も購入している。
EAは米国時間17日、米大手スポーツテレビ局ESPNと15年間のライセンス契約を結んだことを明らかにした。この契約は、EAのライバルにあたるSegaとESPNとの契約が満了する2006年から有効となる。EAは今後、同社の様々なスポーツゲームでESPNのブランドやネットワークパーソナリティを使用していくことになる。
アナリストや各企業の幹部らによると、EAは2005年後半に予定される新世代ゲーム機の発売に伴う業界再編に向け、少しでも有利なポジションを確保しようと努めており、昨年のゲーム開発会社Criterion買収を含む一連の動きもその一環だという。
「これは完全に略奪行為だ」と語るのは、Wedbush Morgan Securitiesのアナリスト、Michael Pachterだ。「EAの行動には違法性や非倫理性は全くなく、EAは単に自社に都合の良い事業を行なっているにすぎない。同社は、最高のミドルウェアやスポーツライセンスの独占利用権を確保し、また他社によるUbisoftの買収を阻止しようとしている。過去にはMicrosoftも、自社の地位向上のために同様の活動を行なった」(Pachter)
EAのバイスプレジデント、Jeff Brownによると、ソニー、任天堂、Microsoftの各社から出る新ゲーム機向けのソフトウェア開発コストが高騰していることから、少なくとも2、3社のゲーム開発会社が倒産するとEAは見ているという。後で倒産企業の骨を拾うよりも、今から行動を起こす方が得策、というのがEAの考えだ。
「向こう数年間は(ゲーム業界の)再編の時代になるだろう」と述べ、さらに「EAは統合される側ではなく、統合する側になるつもりだ」(Brown)
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