テレビゲーム機は、おそらく家庭でのデジタルエンターテインメントの中心になるだろうが、ただしそれは今年の話ではない。
1つのデジタル機器が複数のタスクを処理する「コンバージェンス」という概念は、IT/家電業界で何年も前から存在している。そして最近では、ますます多機能化するゲーム機がコンバージェンスを実現する最有力候補と見なされているが、これはゲーム機が幅広い消費者に受け入れられているためだ。
しかし、デジタルリビングルームの支配権をめぐる戦いでは各社の後退が相次いでいる。最近起こったいつくかの失策から見ても、ソニーやMicrosoftのようなゲーム機業界大手がどんな多機能複合機なら消費者に受け入れられるかについて、答えをいまだに探し続けているのがわかる。
アナリストの中には、コンバージェンスという発想そのものが本当に理にかなっているのかを疑問視する者までいる。「時計つきのラジオ以外で、今までに2つの異なる機能を合わせて成功した例があるだろうか」と市場リサーチ会社IDCのアナリスト、Schelley Olhavaは述べている。
しかし業界最大手の各社は、いまだにコンバージェンスの正しさを信じている。PlayStation 2(PS2)でテレビゲーム機市場を支配するソニーは、同ゲーム機とDVD書き込みデバイス、TiVoのようなパーソナルビデオレコーダー、その他のエンターテインメント機能を組み合わせた多機能複合機「PSX」に希望を託した。
PSXにはこれ以外にもさまざまな期待が寄せられている。PSXは他社製品も含めたあらゆるゲーム機のコンバージェンスに関する実験台として捉えられている。ソニーではPSXが今後十分な数のマニアの欲望を刺激して売上を伸ばし、また全社的なコンバージェンス推進の先駆けとなることを期待している。
しかし、ここに1つ問題がある。PSXの魅力が明らかに消費者に伝わっていないのだ。昨年末に日本でPSXが発売された際には、1000ドル近いこのゲーム機に対して期待したほどの反応が得られなかった。
生産上のトラブルも状況を悪化させた。ソニーは発売日に間に合わせるため、当初のユニットからMP3再生機能など予定されていた機能の一部を削除した。また同社はその後、システム構成を変更した際に、旧式モデルを処分するため一時的に生産を中止せねばならなくなった。ソニーの関係者は日本での売上台数を明らかにしていない。
ソニーが計画する次のステップは、PSXを北米市場に投入することだ。だが日本にいるソニー本社の関係者は、PSXの北米デビューが現在延期されていることを認めた。北米でのPSX発売は当初2004年の年末商戦に合わせて行なわれる予定だったが、現在では2005年中とされ、具体的な日程は決まっていない。発売延期のお陰で、欧米の消費者の好みに合わせてPSXのデザインを改める時間が得られるだろうと、ソニー幹部は述べている。
業界アナリストの中には、PSXは高すぎる価格をはじめ数々の課題に直面しており、発売延期は驚くに値しないと言う人々もいる。
特に、こうした機器は利便性がはっきりしていないため、それを考えると多数の消費者に受け入れられる価格は500ドルだと、American Technology Researchのアナリスト、P.J. McNealyは述べている。
「これは新しいカテゴリの製品であり、すでに世の中にあるものと単純に比較するのが難しい。ちょうど、DVDレコーダーが登場したとき、人々がその価値を理解するのに苦労したのと同じことだ」(McNealy)
PSXのような複合機の場合、価格は特に複雑な問題だとリサーチ会社DFC Intelligenceのオーナー、David Coleは言う。通常ゲーム機メーカーは、ハードウェアは赤字で販売し、ソフトウェアの売上で入るロイヤリティで利益を得ている。しかし1つのゲーム機にそれ以外の機能も搭載するようになると、このビジネスモデルが機能しない可能性がある、とColeは指摘する。
「メーカーがゲーム機の価格を大幅に下げられたのは、ソフトウェアの売上で補うことが可能だったからだ。PSXのようなハイブリッド機器では、購入者は必ずしもゲームをたくさん買うわけではない。だが、これが取って代わろうとしている既存製品よりも高価な金額を設定できるとは必ずしも期待できない」(Cole)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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