CEATEC JAPAN 2003の開幕2日目となった10月8日、シャープ代表取締役社長の町田勝彦氏が講演を行った。社長就任以来、一貫して「ナンバーワンよりオンリーワン」を掲げてきた町田氏は、その代表例となった液晶テレビに対する取り組みを紹介しながら、同社の経営戦略について語った。
町田氏は「ナンバーワンよりオンリーワン」という標語について、「チャレンジャーの戦略」と説明する。「下位の企業がいかに生き抜くかを考えた結果、オンリーワン経営にいきついた」(町田氏)
エレクトロニクス業界は町田氏が社長に就任した1998年頃から、世界規模での競争が始まった。アジア各国の企業が台頭し始め、シャープが世界市場で生き残っていけるのかと強い危機感を抱いたと町田氏は語る。「今までの延長線上でやっていてはダメになる。他社と違う戦略が必要だと感じた」(町田氏)
「オンリーワンを積み重ねてナンバーワンになるのが理想だ。しかしシェアや売上規模など数字を追うと、ありきたりな商品ばかりになってしまい、結果として利益も減少する」と、規模の拡大を追いかけることには強い警戒感を示し、独自性にこだわる姿勢を強調する。
「経営戦略は、その会社の風土や業界における位置など、身の丈に応じて様々な形があっていい。流行に後れてはいけないなどと他社に付和雷同するのではなく、自社の強みを押さえて磨きをかけるべき。横を見て経営をすると自分を見失うだけだ」(町田氏)
オンリーワンを具現化した液晶テレビ
シャープ代表取締役社長の町田勝彦氏 | |
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町田氏がオンリーワン製品の例としてあげるのが液晶テレビだ。町田氏は1998年頃から、「2005年までに国内のカラーテレビを、ブラウン管から液晶に置き換える」と宣言していた。当時はずいぶん反論も受けたというが、「フラットパネルディスプレイの現状を見ると、そうなってもおかしくないところまで来た」(町田氏)と自信を見せる。
町田氏はなぜ、1998年の時点でこのように思い切った決断ができたのか。それは、シャープが自前でブラウン管の中核デバイスを持っていなかったためだと町田氏は説明する。「大手企業や強いブランドを持つ企業であればキーデバイスがなくても平気だろう。しかしシャープのような中位企業ではキーデバイスがないと、いいものを作っても市場から評価されない」(町田氏)。その一方、シャープは30年以上前から電卓に液晶を搭載するなど、液晶に関しては長い歴史を持っていた。「液晶なら歴史も可能性もある。社員のベクトルを合わせるためにも、ここはひとつ、大きな決断をしようと考えた」(町田氏)
この決断は、今となっては正しいものだったと言えるだろう。米DisplaySearchが発表した液晶テレビの世界需要予測によると、同市場規模は2003年に445万台、2005年には1386万台になるという。さらにチューナー内蔵の液晶モニターの市場は2005年に300万から400万台の規模になるとされており、「合計で2005年には1800万台くらいの市場になる」と町田氏は期待を寄せる。
これだけの話を聞くと順風満帆に思えるシャープの液晶ビジネスだが、大きな問題もあると町田氏は語る。それは、技術者不足の問題だ。町田氏によると、プロセス技術者や開発技術者が不足しているという。「特にテレビ用のディスプレイは難しい。技術者の問題がボトルネックとなり、液晶テレビ用のパネルが不足する状況はまだしばらく続くのではないか」(町田氏)
“環境先進企業”というブランド形成を目指す
町田氏は今後、シャープのブランド形成に力を注ぐ方針だ。引き続きオンリーワンの製品作りに力を入れるが、もうひとつの柱が環境保全に対する取り組みだ。「シャープには液晶という省エネの製品だけでなく、太陽電池という、エネルギーを作り出すいわば“創エネ”製品がある。これらの環境に良いデバイスを極めていく」(町田氏)。また、環境負荷を低減する技術を磨き、省エネ性やリサイクル性などを極限まで追求した商品を、“スーパーグリーンプロダクト”として認定、販売していくという。
さらに工場の環境負荷にも配慮する。2004年1月に稼働開始予定の亀山工場では二酸化炭素の発生を抑えるほか、排水を100%再利用するなどの取り組みを行っていくという。これらの取り組みによって、“環境先進企業”というブランドを目指すと町田氏は語り、「きらりと光るオンリーワン企業になりたい」として講演を締めくくった。
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