通信・情報・映像分野の各社が最新技術を展示する「CEATEC JAPAN 2003」が10月7日、幕張メッセで開幕した。初日の特別講演にはソニー 取締役 代表執行役 会長 兼 グループCEOの出井伸之氏が登場した。
出井氏はまず、自身が議長を務めた政府のIT戦略会議を振り返った。2001年1月に発表された第一期e-Japan戦略ではインフラの整備を目的に、「遅くて高いインターネット」から「早くて安いインターネット」へ変化させることを目標として掲げた。「米国を抜くインターネット社会を目指した」(出井氏)
出井氏は当時の総理大臣であった森氏について、「報道ではITを『イット』と読んだなどといわれていたが、非常にユーモアのある人だ。現在のインターネットの普及状況を見ると非常に担ぎがいのあった人だと感謝している」と述べた。
その後第二期e-Japan戦略では、整備されてきた通信基盤の上で利用するアプリケーションについて取り決めが行われた。総理大臣が小泉氏に代わり、構造改革とITが切り離せないものだという認識が世の中に広まってきた時期だと出井氏は分析し、「通信基盤上で構造改革を推進するという動きになった」とした。
ソニー 取締役 代表執行役 会長 兼 グループCEOの出井伸之氏 | |
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2003年7月に発表された第二期e-Japan戦略の最も大きな成果として出井氏は、「ヨコでつながるコンセプトを行政に持ち込んだこと」を挙げる。医療や食、就労など7つの分野を「先導的取組みによるIT 利活用の推進分野」と決め、各省庁が協力して取り組むようにした。
出井氏は「日本が持つ技術や知はすばらしいものがある。きちんと方向性さえ持てば、やっと製造業が生まれたような国とは比べ物にならない深みと幅がある」と語り、今後の発展に期待を寄せる。特に日本のエレクトロニクス企業は互いにパテントを利用しあうなど、共存共栄の精神を大切にしてきたと指摘。「全体的に世の中を良くしようという考えがある」(出井氏)として、他の国にない日本の良さを強調した。
ただし、一方で出井氏は苦言を呈すことも忘れない。Samsungが韓国の経済危機を契機に急激に変化、成長したことを挙げ、「我々には危機感が足りないのではないか」と警鐘を鳴らす。日本でも日産が急激に業績を回復するなど、「失われた10年」から変わり始めているが、「日本も変わってはいるが、スピードがまだ遅い。国際的なスピードで変わっていかないといけない」と危機感を示した。ソニー自身も改革を迫られているが、「一時的な改革ではなく、ずっと続くモデルを考えないといけない」(出井氏)と語るにとどめ、具体的な改革方針などについては言及しなかった。
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