だが、Jobsは満足そうだった。WWDC基調講演のデモで、同氏はコード変換されたソフトウェアが「非常に高速」に動いていると述べたが、ただしプレゼンテーションのスライドにはパフォーマンスは「十分(に使える程度)」と記されていた。同氏がデモに使ったコンピュータはPentium 4/3.6GHzと2Gバイトのメモリを搭載していた。
Appleは、これまでプラットフォームの移行時に、旧型Macのユーザーを積極的にサポートしてはこなかったが、それでもプロセッサ移行時のユーザー支援に関してはいくらか経験がある。同社が1994年にMotorola製680x0プロセッサからPowerPCに切り替えたときには、ユーザーが新型マシン上で古いソフトウェアを動かせるようにするエミュレーションソフトを提供していた。
また、WiederholdもAppleを顧客にできたことをとても喜んでいる。「画期的な技術を持つ多くの新興企業に対して、主張通りの結果が出るのかどうかなど、技術自体について懐疑的な見方をする人間が多い。われわれが成功するには、証拠を示すことがきわめて重要だ.」(Wiederhold)
1点だけ明確になっていないのは、Rosettaが逆の処理もできるのかどうかという点だ。そうであれば、Transitiveの収益源が大幅に拡大されることになる。つまり、今後登場するMac用ソフトが古い世代のマシンでも確実に動作するのであれば、潜在的な顧客がPowerPC搭載Macを買い控えることを防げることになる。
Transitiveは昨年秋に、このような機能をサポートするQuickTransitをリリースしたが、Appleがこれを利用する計画があるかどうかについては、Wiederholdはコメントしなかった。
Appleは、TransitiveがRosetta技術のどこに使われているのかを語りたがらなかった。だがJobsは、Transitiveが一定の役割を果たしていることをNew York Times紙とのインタビューで正式に認めている。
一方、CNET News.comのインタビューに答えたAppleのシニアバイスプレジデントPhil Schillerは、Rosettaのなかに同社が社内で開発した部分がどれくらいあるのかを明らかにしなかった。「詳細について話すつもりはないが、これがAppleの技術だというだけは言える」(Schiller)
Transitiveには約65人の従業員がおり、エンジニアはすべて英マンチェスターの拠点で働いている。同社の創業者兼最高技術責任者(CTO)、Alasdair Rawsthorneはマンチェスター大学にいた1995年にこの技術を開発し、それを中核に2000年に同社を立ち上げた。
同社は3度の資金調達(2000年10月、2002年2月、2004年9月)を行い、あわせて2400万ドルを集めていると、Wiederholdは述べた。資金を提供したのはPond Venture Partners、Crescendo Ventures、Accel Partnersの3社だ。
Wiederholdによると、Transitiveは現在大手コンピュータメーカー6社と取り引きしており、今後数カ月のうちに新たな取引も発表されるはずだという。また、今年末から来年のはじめにかけて、同社は新たな顧客層に向けて製品を発売したいと考えている。新たな顧客層とは、自社のソフトウェアを別のプロセッサに素速く対応させる手段としてTransitiveのQuickTransitを製品にバンドルするソフトウェアメーカーだ。
QuickTransitは、ItaniumやPowerPC、そしてIntelとAMDの両社から出ているx86系チップに対応する。このソフトウェアはx86マシンやメインフレーム、Powerチップ、MIPSチップ用のソフトウェアをコード変換できる。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境