富士通と名古屋大学は共同で、電話の会話を分析することで通話相手の説明内容に対する考察能力の低下に気付いていない状態を自動検出する技術の開発に成功したと発表した。世界初だという。
人間の認知・判断能力には限界があるため、好ましくない情報などを過度に与えられると、気付かないうちに情報の内容に対する考察能力が低下する「過信」と呼ばれる状態になるといわれている。過信状態になると、たとえば振り込め詐欺からの電話の説明を信じ込んでしまうことがあるという。今回開発した技術は、こうした状況を検出して、適切なサポートにつなげることが振り込め詐欺を防ぐ上で必要になるとしている。
通話相手からの好ましくない情報で過信状態になっている状況を検出するためには、音声認識でその状況に特有なキーワードが会話に含まれていることを検出する技術が従来から活用されている。だが、心理的に抑圧されている場合は、発声が不明瞭になることがあるため、キーワードの検出だけでは精度が不十分と指摘されている。そうした場合でも高い精度で過信状態を検出する技術の開発が課題になっていた。
両社は今回、声の高さと大きさの変化を検出することで、過信状態らしさを推定する技術を開発している。この技術を活用して振り込め詐欺の通話の実証実験で90%以上の精度で過信状態を検出できたという。過信状態を検出する基本技術が実現するめどが立ったとしている。
振り込め詐欺を抑止するためには、振り込め詐欺の通話を検出して被害者本人の注意を喚起するほかに、家族などの第三者の注意を喚起してサポートにつなげることが有効とされている。今回の検出処理では、過信状態らしさを特定するとともに、その時の状況を示す特徴的なキーワードを検出して、その結果を統合して、振り込め詐欺の通話を検出する。
今回の技術は今後、携帯電話などを活用したプロトタイプでの実証実験を、警察庁と名古屋大学と協力して3月から始める。
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