アドビシステムズ(アドビ)は11月19日、電子出版ソリューション「Adobe Digital Publishing Suite(Digital Publishing Suite)」の説明会を開催し、同社の電子出版に対する取り組みを紹介した。
アドビは電子出版を、ビジュアルが中心となる「雑誌/カタログ」や「マンガ」 と、テキストが中心となる「書籍」や「新聞」と大きく4つに分類。Digital Publishing Suiteはその中でも雑誌やマンガをターゲットにしたものだと、アドビ マーケティング本部クリエイティブソリューション部部長の福井恵氏は説明する。
また、米Adobe Systems(Adobe)のデジタルパブリッシング部ビジネス デベロップメント担当シニアマネージャーのNick Bogaty氏は、電子出版について4つの課題があると語る。
まず、出版社がさまざまなデバイス上で美しい電子雑誌を展開するということだ。「もともと出版社はデザインをコントロールできていたが、同じ力をウェブ側で持つことができない状態」(Bogaty氏)。
次の課題として、ワークフローの最適化を挙げる。新たな環境や人材を用意することなく、既存のワークフロー、既存のデザイナーが電子雑誌を作成できる必要性があるとした。
さらに効率的かつ広範囲に電子雑誌を配信すること、紙の雑誌同様に課金を行い、ビジネスとして成功することを挙げた。
Bogaty氏は、これらの課題を解決するものこそがDigital Publishing Suiteだと語った。Digital Publishing Suiteは制作、配信、課金、効果測定の機能を持つホステッドサービスと、Adobe InDeSign CS5を中心としたAdobe Creative Suite 5(CS5)ファミリーを組み合わせたソリューションだ。米Conde Nastの「WIRED」や「The New Yorker」をはじめとして、すでに20以上の電子雑誌が制作、配信されている。
「CS5と統合しているので、今まで使い慣れた製品で電子雑誌を作成できる。出版社自身がブランドアプリケーションを作ることができる。また、配信サービスを使ってiTunesのApp StoreやAndroidマーケットに展開できるほか、出版社による直接販売も可能。Omniture製品(Adobe SiteCatalyst)とも統合しており、読者の動向や広告の成果などが確認できる」
説明会では。Adobe デジタルパブリッシング部プロダクト マネジメント担当ディレクターのZeke Koch氏がDigital Publishing Suiteで作成した電子雑誌のデモンストレーションを行った。電子書籍には静止画のほかに動画も組み込めるほか、Twitterのフィードを挿入するといったこともできる。また、タッチ操作でさまざまな角度の画像が楽しめる、360度のパノラマ写真なども利用できる。
エントリー向けのプロフェッショナルエディションと、拡張性を備えたエンタープライズエディションの2種類のパッケージを用意している。概要や北米での価格は以下の通り。なお現時点で国内での価格は明らかにされていない。
アドビでは2011年第2四半期に北米、欧州から商業サービスを正式に提供する予定。「紙媒体を作るときに使うツールだけで、コードを書かずに電子雑誌を作成できる。出版社が実験し、成功するタイミングに入った。日本でも出版社や印刷業者らとパートナーシップを組んでいきたい」(Bogaty氏)
すでにプレリリースプログラムを開始しており、審査を受けてプログラムに参加することで、コンテンツの配信や課金サービスも利用できる。すでに国内で120、全世界で1600のプログラム参加者がいるという。Adobe Labsでもツールを配布するほか、国内向けに日本語マニュアルも公開している。ビューワはiPhoneおよびiPadに対応するが、Adobe AIRベースのAndroid向けビューワも開発中だという。
日本での導入事例も紹介されている。インプレスグループの山と渓谷社と大日本印刷は、共同で新雑誌「Hutte(ヒュッテ)」を紙と電子雑誌で同時展開していくほか、アマナインタラクティブが電子カタログソリューション「Visual Communivation APP」を開始。すでにiPhoneアプリを展開中のコンデナスト・パブリケーションズ・ジャパンは「VOGUE Angels」でDigital Publishing Suiteを採用している。またLotus8はファッションブランド「HEAD PORTER」のiPad向けカタログを提供する予定だという。
さらに、マンガのマルチデバイス展開を進める集英社では、「週刊少年ジャンプ」の写植にInDesignを利用することで、コミックや海外展開におけるコストメリットが出たという。またセリフをテキストデータ化として蓄積し、検索できるようになったことで、新しいコンテンツが生まれるかどうか模索中であることが説明された。
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