スマートフォンやタブレットなどのWi-Fi対応機器の増加や、大容量データを扱う動画配信サービスの普及など、Wi-Fiを取り巻く環境は年々大きな負荷がかかっている。なかなかつながらなかったり、通信が途切れてしまったりと、不安定な環境を余儀なくされている人も多いだろう。
Wi-Fiの遅い、つながらない、途切れるといった要因の1つは、利用者の混み具合。多くの人が一度にWi-Fiにつなげるオフィスやホットスポット、また利用の増える夜間などの時間帯は、どうしてもつながりにくくなってしまう。
そうしたWi-Fiのイライラをなくし、快適なネット環境を構築するのが、米サンフランシスコに本拠地を置く、IGNITION DESIGN LABS(イグニッションデザインラボ)が開発したWi-Fiルータ「Portal(ポータル)」だ。
IGNITION DESIGN LABSは、創業して約1年のスタートアップ企業。しかし創業メンバーは無線通信チップメーカーに長く務めたベテラン勢で、現在米国、台湾、欧州で30数名がこの事業に従事している。今後は日本オフィスも構える計画だ。
Portalの特徴は何と言ってもそのつながりやすさ。オフィス環境で通常のWi-Fiルータと比較して動画を再生してみたところ、開始に数秒の差が生じ、その差は歴然だ。
Wi-Fiが混みあったオフィス環境で、なぜここまで差が出るのか。その秘密は、使用しているWi-Fiの帯域にある。Wi-Fiの帯域は、2.4GHz帯と5GHz帯があり、5GHz帯には気象レーダーや軍事用レーダーが使用しているチャンネルがある。通常そのチャンネルは使用できるが、各種レーダが作動した場合、即座にそのチャンネルを空けなければならず、チャネルを変更する「DynamicFrequencySelection(DFS)」が必要になる。
DFSをサポートしているWi-Fiルータブランドは多いが、いつレーダを検出するかわからないため、常に監視が必要で、扱いにくいのが現状。空いている帯域ながら、このような条件のため、デフォルトでこのチャンネルをオフにしているWi-Fiルータも多いという。
「Portalは、気象レーダなどの使用を検知した場合、即座に別のチャンネルへと“逃げる”技術を採用していることが特徴。さらに新たな移動先も空いている帯域の中から探しだすため、動画などの重いデータを扱っていてもサクサクと動く」と、Founder/PresidentのTerry Ngo氏は、Poratlの特徴を話す。
レーダを検知した瞬間に別のチャンネルに移るため、Poratlでは専用のラジオを搭載し、常時レーダを検出。これにより「常に一番空いているチャンネルを把握できている。Wi-Fiの混み具合をヘリコプターに乗って上から見ている状態」(Ngo氏)だという。IGNITION DESIGN LABSでは、レーダを検知した瞬間に別の空いているチャンネルへと"逃げる”技術に特許を持っており、瞬時にそして確実に"逃げる”ことで、常に快適なWi-Fi環境を提供できるという。
Ngo氏は「Portalが提供するのは、道路における『高速道路』。一般道が混んでいても高速道路は空いていて、車がどんどん流れている状態」と表現する。「人口密度の低い場所ではWi-Fi環境が安定しやすいため、私たちがターゲットにしているのは首都圏。そういう意味で日本のなかでも東京は非常に魅力的なマーケット。日本全体を見てもブロードバンドが整備されているため、無線の“ボトルネック”が見えやすく、Portalの良さを体感してもらいやすいはず。集合住宅の多さもターゲットに合っている」としている。
Portalは、6月30日から「GREENFUNDING by T-SITE」でクラウドファンディングを実施。目標額は100万円で、超早割り価格1万3800円(白または黒)と、日本だけの限定色Rioブルーが1万4800円で用意されている。専用のアプリを導入すれば、SSIDやIPなどの面倒な確認作業を必要とせずすぐに接続できることも大きなポイントだ。
IGNITION DESIGN LABSでは、Portalの技術をWi-Fiルータメーカーに提供することも視野に入れているとのこと。「簡単に接続でき、快適に使えて、セキュリティも担保できる。そういう製品を提供していきたい」とNgo氏は今後について話した。
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