川上会長「テレビでは流せないものを」--ニコニコが日韓問題ドキュメンタリーを制作

 ドワンゴとニワンゴは7月15日、両社が運営する動画サービス「niconico」の新たな取り組みとして、ドキュメンタリーを中心とした世界中の映像作品を配信する「ニコニコドキュメンタリー」を開始することを発表した。

 ニコニコドキュメンタリーは、「本当のことを知りたい」をテーマに、国内外・新旧問わず、ネットメディアだからこそ配信できる衝撃作や話題作を配信するというもの。niconico自ら企画制作するものもあれば、日本で公開される機会が少ない世界の問題作品の配給や配信のサポートもしていく。

第三者が見た日韓問題のドキュメンタリーを制作。反日作品の放送も

  • 「タイズ・ザット・バインド ~ジャパン・アンド・コリア~」タイトル画像

 企画の第1弾として、国際的な第三者の視点から日韓問題を描いたオリジナルドキュメンタリー作品「タイズ・ザット・バインド ~ジャパン・アンド・コリア~」を配信。従軍慰安婦、領土問題、ヘイトスピーチなど、さまざまな論点について取材した内容となっている。7月30日22時からエピソード1、8月7日22時からエピソード2を放送。韓国字幕版も同時配信する。企画と著作はドワンゴで、制作は英国のBlakeway Productions。またBBCワールドワイドを通じ世界に向けた配給も計画している。作品の上映後には、解説番組や討論番組などの生放送も実施。特設サイトも設け、ユーザー同士が活発に議論できる場を併せて提供するという。

  • 討論や解説番組のスケジュール

 このほか、中国人監督が1997年から10年に渡って靖国神社を取材したドキュメンタリー「靖国 YASUKUNI」、イタリアの若手監督2人が、世界中の米軍基地で巻き起こって いる問題に迫ったドキュメンタリー映画「誰も知らない基地のこと」、韓国国営放送が100億ウォンを投じたドラマ「カクシタル」、南京事件が描かれた衝撃の中国映画「南京!南京!」など、ネットだからこそ放送できる作品の配信も予定。また、オリンパス損失隠蔽事件を描いた長編ドキュメンタリー「サムライと愚か者 ~オリンパス事件の全貌~」について配給に加わり、日本初配信を予定。また今冬劇場公開も予定している。

川上会長「地上波では流せないものをやる。なければ自分たちで作り出す」

  • ドワンゴ代表取締役会長の川上量生氏

 ニコニコドキュメンタリーの開始にあたり、発表会が開催された。ドワンゴ代表取締役会長の川上量生氏、ドワンゴ会長室エグゼクティブ・プロデューサーの吉川圭三氏、Blakewayのクリエイティブディレクターを務めるFiona Stourton氏が登壇した。

 川上氏は、1年以上前からニコニコドキュメンタリーの構想を持っていたことを明かした。niconicoでは政治に関するジャンルも扱うようになり報道もするなかで「話題を作ってきた自負はあるが、あまり面白いことができていないと感じていた。また政治の側からの争点が長期政権になったこともあってか、あまり出てきていない。だとしたら、自分たちから作ろうと思った」ときっかけを語った。

 ニコニコドキュメンタリーでは、テレビでは流さないような作品を作りたいと川上氏は考えているという。「よく反日ドラマや映画が公開されているという話を聞いても、実際に見たことは日本でほとんどいない。それならば、見てみようと。テレビの地上波では流せないものでも、ニコニコであれば配信できるようなものはもっとあるのではないか。無いものはいっそのこと自分たちで作ってしまう」と語った。

 タイズ・ザット・バインドについて川上氏は、今の日本で触れにくい話題として真っ先に挙げられるのは日韓問題であると言及。もっとも、そのテーマを仮に日本で制作しても偏った内容になってしまうことから、第三者の国が制作するのが適切と考え、BBCに相談したところ、Fiona氏を紹介されて制作が進められたという。「第三者としての主観にはなるが、少なくとも日本でも韓国でもない視点は新鮮に感じられると思った。実際に映像を見てとても驚く内容だった。知っていると思うことでも見方が変わる」と述べた。

  • ドワンゴ会長室エグゼクティブ・プロデューサーの吉川圭三氏

 ニコニコドキュメンタリーの中心人物である吉川氏は、もともと日本テレビで「世界まる見え!テレビ特捜部」の企画とプロデュースを担当し、1万本以上のドキュメンタリー番組を見てきたなかで、地上波では放送できない面白い映像は世界中にあると語る。

 タイズ・ザット・バインドの制作にあたり、2015年頭にリバプールでFiona氏と会い、最近の日本の状況だけは参考程度に伝えつつも、内容に関するオーダーは一切せず、制作スタッフにゆだねたと説明。「BBCのリサーチ力や映像の完成度の高さとすごさを感じた。こういったドキュメンタリーを世界商品にしている英国の強みがある。学術的にも価値がある内容になっている」と絶賛し、自信を見せた。また解説番組や討論番組などの生放送を実施することについては「ただ流しっぱなしにはせず、その映像で受けた刺激を語り合うことも重要。新しい試みになる」と付け加えた。

  • Blakewayのクリエイティブディレクターを務めるFiona Stourton氏

 Fiona氏はドワンゴ側からドキュメンタリーの依頼があったときのことを「テーマが素晴らしいものかつ重要なものであることから、名誉であり興奮した」と振り返った。タイズ・ザット・バインドは60分の映像が2本用意されている。当初1本だけの予定だっかが、長い歴史の問題を包括的に扱うことを考え取材したことから、計120分の映像になったという。エピソード1では16世紀までさかのぼって歴史をひもとき、そこで起きたさまざまな問題を、エピソード2では在特会やヘイトスピーチなど現代におけるさまざまな状況を取材したという。取材のなかでは「対立やネガティブというところにスポットを当てるだけではなく、両国を和解させていきたいという前向きな意見もあり、それらも紹介している」という。

 タイトルである「タイズ・ザット・バインド」は、Fiona氏によると英国で好き嫌いに関わらず、お互いに結びつけているものという意味あいがあるという。「たとえば兄弟や姉妹の仲が悪くても、家族としての関係は切り離せないもの。日本と韓国はまさにその関係ではないか。日韓関係を象徴するタイトル」と経緯を語った。

 今後の展開のなかで川上氏は「今の日本の環境ではドキュメンタリーを作ることが難しい、披露する環境がない状況を支援する意味もある」として、ドキュメンタリー作家へのサポートなども視野に入れていることを明かした。

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