「Windows Vista」に搭載される新たなセキュリティ関連機能により、スパイウェア対策ソフトやファイアウォールソフトを別途動かす必要がほとんどなくなることが、新たに公表されるアナリストのレポートから明らかになった。
市場調査会社のYankee Groupが米国時間5月8日に公表予定の調査レポートによると、Vistaの登場は、一般ユーザーが利用するPC環境のセキュリティ強化につながるだけでなく、36億ドル規模のWindows向けセキュリティ製品市場にも非常に大きな影響を及ぼすことになりそうだという。Windows Vistaの一般発売は2007年前半に予定されている。
「Yankee Groupでは、Vistaの登場により、スパイウェア対策ソフトやデスクトップ用ファイアウォールソフトのアフターマーケットが大幅に縮小すると見ている」とアナリストのAndrew Jaquith氏はレポートのなかで述べている。さらに同氏は、Vistaが出れば、ディスクの暗号化やデバイス制御用のソフト、特定種類の侵入防止用ソフトのニーズが減少する可能性もあるとしている。
しかし、Yankee Groupによると、ウイルス対策ソフトウェアの市場にはVistaの影響はまったくないという。26億ドルの規模を持つウイルス対策ソフトウェア市場は、Windowsクライアント用のセキュリティソフトウェアのなかでも最大の市場となっている。Vistaにはウイルス対策機能は含まれず、Microsoftは別途「Windows Live OneCare」というウイルス対策ソフトを6月から販売することにしている。
関連市場への影響の大きさは、Vistaに搭載される機能の中味によって変わってくる。Jaquith氏によると、Vistaに搭載されるスパイウェア対策ソフト「Windows Defender」や機能が強化された「Windows Firewall」は、大多数のユーザーにとって十分な機能を持つものだという。しかし、ディスク暗号化機能の「BitLocker」やUSBキーなどのデバイスを管理するためのツール類はすべてのユーザーに役立つものではないと、同氏はインタビューのなかで述べた。
これらの機能は、規模の小さな組織にとってはそのままでも十分使い物になるかもしれないが、大企業ではさらに多くの管理機能が必要となるため、サードパーティ製品の入り込む余地が残るとJaquith氏は述べている。「管理性やスケーラビリティを重視することが可能な企業(の製品)は、たとえVistaと重複するものであっても、引き続き健闘するだろう」(Jaquith氏)
Microsoftは、Vistaに関して野心的な目標を掲げていたが、度重なる開発の遅れに直面し、多くの部分を取りやめにしてきた。しかし、セキュリティ機能の強化についてはほとんど変更を加えていない。Yankee Groupは、Vistaの登場でユーザーに影響する、緊急性の高い脆弱性の数が最大80%減少し、また残りの脆弱性についても影響は大幅に低下すると考えている。
しかし、Vistaでの変更で大半のユーザーにとってのリスクが減る一方で、これらのセキュリティ機能によりOSのアップグレードは簡単に進まないだろうと、Jaquith氏は注意を促した。「Vistaによって、Windowsユーザーのセキュリティは大幅に改善されるが、ユーザーは、プログラムの実行やユーザビリティに関していくつかの課題に直面するだろう。Vistaがユーザーにとって厄介なものになる日がくるのは明らかだ」(Jaquith氏)
こうした問題の原因になりそうなのは「User Account Control」のような機能だ。この機能はユーザーが現在よりも少ない権限でWindowsを動かせるようにするもので、デフォルトで有効にされることになっている。この機能の狙いは、悪質なソフトウェアがWindows PC上に、侵入のための足がかりを得るのを防ぐことにある。「新しいセキュリティシステムには期待が持てるものの、決して包括的なものではなく、厄介である」(Jaquith氏)
こうしたことから、Yankee Groupでは最先端を行きたいとは思わない企業ユーザーに対して、2008年までVistaへの移行を見送り、それまでは引き続きWindows XP Service Pack 2を使うように勧めている。さらにJaquithは、「ハードウェアのアップグレードを検討している企業は、リスクヘッジとして、MacとWindowsのデュアルブートが可能なAppleのIntel Mac製品も考慮するべきだ」と述べている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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