ワシントン発--全世界で送受信される電子メール全体のうちスパムが占める割合は、約7割と依然として高い割合を維持している。しかし、スパムの数自体は横ばい状態にある。この結果について、米政府関係者らは20日、2年前に制定された法律が功を奏している証拠だと指摘した。
米連邦取引委員会(FTC)はワシントンで開催された記者会見の中で、先週議会に提出された報告書を発表した。それによると、スパムメール対策法であるCan-Spam Actが「消費者を保護する上で効果を発揮している」という。
FTCの消費者保護局(Bureau of Consumer Protection)のディレクター、Lydia Parnesによると、Can-Spam Actが制定されたことにより、FTCはスパマーの提訴が可能になったという。また、未承諾メールにおける「オプトアウト(ユーザーによるメール受信の拒否)」用リンクの設定や送信者の住所の記載といった、商用メールに関する「最良事例」の導入が加速したという。
しかし、Can-Spam Actの効果については、はっきりしていない部分もある。スパム対策企業がまとめた統計によると、2004年の迷惑メールの総数は、前年比62%と急増している。しかしその一方で、フィルタリング技術も劇的な進歩を遂げた。迷惑メールが急増したにも関わらず、受信トレイが迷惑メールで埋め尽くされなかったのは、フィルタリング技術が進歩したおかげかもしれない。
Can-Spam Actに対する批判の中には、より厳格な「オプトイン(ユーザーによるメール受信の許諾)」の代わりにオプトアウトを義務付けている同法が制定されたことにより、迷惑メールが増加したという指摘もある。これは、商用メールの受信希望者に商用メーリングリストへの登録を義務付けたカリフォルニア州法などの厳格な州法を、米議会が意図的に廃止したからだ。
FTCのParnesも、スパム減少の理由をCan-Spam Actにのみ求めるのは問題であると認めている。「スパムの減少が、Can-Spam Actと技術の進歩のどちらの効果によるものかを解析するのは困難と考える」(Parnes)
また、Parnesは、スパムの内容が悪質化している点、さらに、ドメイン名登録に偽名を使い法的処罰を逃れているスパマーがいる点を警告した。FTCは、ウェブ上に潜む危険について消費者を教育する継続的取り組みとともに、スパム対策技術や「ドメインレベルの認証」の向上/改善を促した。
FTCが下した結論は、法の執行や「多数の個人」に対する聞き取りを通じて得た経験に基づいている。その「多数の個人」には、消費者団体の代表者、メールを使ったマーケティング業者、インターネットサービスプロバイダ(ISP)、司法当局者、コンピュータ科学者などが含まれている。
FTCは、MX Logicなどのメールセキュリティ企業から提供されたデータを基に、スパムメールの数が横ばい、もしくは、わずかに減少しているとの結論を導いた。MX Logicの試算では、同社がスクリーニング(選別)した全メールのうちスパムに分類されたメールの割合は、2004年は平均で77%だったのに対し、2005年は68%に減少した。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス