東芝欧州研究所(Toshiba Research Europe Limited:TREL)は、世界で初めての信頼性ある量子暗号システムと同研究所が主張するシステムのデモを行なった。
東芝によると、同システムは単光子を使って、標準的な光ファイバ上で盗聴不可能な暗号キーを転送するもので、先週稼働し始めて以来動作を続けているという。同システムは毎秒何千個もの暗号キーを転送でき、さらに100キロメートル以上の長距離間でも使用可能だ。
東芝では、この技術の商用化を目指し、すでに多くの通信事業者やエンドユーザーと交渉に入っているという。この暗号システムが商用化されれば、ネットワークを通じたデータ転送の安全性が大幅に向上する可能性がある。
「現在、多くの潜在エンドユーザーと交渉中だ」と語るのは、英国ケンブリッジに拠点を置く東芝のQuantum Information Groupでグループリーダーを務めるAndrew Shieldsだ。同氏はさらに、「来年ロンドン市内でいくつかの試験を行う予定でおり、金融部門のユーザーをターゲットにしようと考えている。またMCIなどの通信事業者もわれわれのシステムに関心を持っている」と付け加えた。
東芝によると、同システムの価格や発売日は未定だという。
同システムでは、1と0で表すために変調された光子の流れを転送するが、それらの光子の大半は転送途中で失われてしまう。これらの光子は、異なる2種類の偏光を通じて、2つの方法のうちの1つで変調することができる。しかし、ハイゼンベルグの不確定性原理によると、偏光の種類と光子で表されるデータの両方を知るのは不可能であるという。そのため、受信者は一方を得るためにもう一方を推測する必要があるが、誤ることが多い。
このシステムで使用されている受信機は、無事に届いた光子のいくつかを抽出して解読を試み、どの光子を受信し解読したかを送信者に折り返し報告する。それにより、受信者と送信者の双方が知る暗号キーを作り上げることが可能になる。通信を盗聴しようとしても、盗聴者はそれらの光子の数値を知ることができない。なぜなら、転送途中でそれらを読み取ろうとすると、光子を破壊してしまうからだ。また盗聴者は光子の正確な詳細情報を知らないので、それらを読み取った後、別の光子に置き換えることもできない。
東芝は量子ドットによって単光子のやりとりを生成/分析するための特別なハードウェアの開発を進めてきた。量子ドットとは、制御回路と統合された事実上人工の原子である。しかし、既存の暗号システムには、非常に低い騒音レベルで動作し、ペルチェ効果によって冷却される検知器などの標準部品が使用されている。次世代の暗号システムには、東芝の新技術が導入される見込みだ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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