Fringe81は5月24日、統計解析などの技術を組み合わせた自動広告生成・配信プラットフォーム「iogous」(イオゴス)を発表した。キャッチコピー、文字色、ビジュアル、背景色などを組み替え、数千種類以上のバナー広告を自動で生成し、クリックされやすいバナー広告のみを配信できる。
iogousはFringe81が独自開発した「クリエイティブ・オプティマイゼーション」技術を利用したプラットフォーム。統計解析を用いて、デザイン要素や文言を自動最適化する。
従来のバナー広告はデザイナーが制作したものを一定期間メディアに貼り付け、その後、効果を把握するという運用が一般的だった。そのため、どのくらいCTR(クリック率)が出るのかが読みづらいという課題があった。また一度掲載したバナー広告は手間の問題で差し替えが難しい。
結果的に、バナー広告のクリエイティブはデータではなく、デザイナーの経験と勘に頼ることになり、パフォーマンスを改善しようにも差し替えに手間がかかるようになる。Fringe81代表取締役社長の田中弦氏によれば、1バナーあたりのコストも1万円前後と高額になりがちだという。
iogousはこうした従来のバナー広告の課題をすべてクリアした点が特徴だという。その手法は、数千種類のバナー広告を安価に自動生成し、リアルタイムで効果測定しながらパフォーマンスの高いバナー広告のみを自動表示するというものだ。
たとえばジャストシステムは、iogousを試験的に使い、背景色、背景色の効果(グラデーション、網掛け)、キャッチコピー、ビジュアルなどを自動で組み替えて、約4800種のバナーを作った。要したコストはわずか20万円。1バナーあたり42円までコストを下げたことになる。
パフォーマンスも高かったという。下の9種類のうち、もっとも効果を上げたバナー広告はもっとも効果の低かったバナー広告の6倍以上の効果があったという。
人間の目で見ても、どれが効果的なバナーかはわからないが、iogousは統計解析技術を用いてCTRの高いバナー広告を見つけ出せる。「これはもはや人間の感覚では改善不可能な領域である」と田中氏は話す。
成績の良いバナー広告から類似のバナー広告を派生させる仕組みも持つ。優れたバナー広告の「子孫」を多く投入することで、さらにパフォーマンスの向上が可能だという。
ジャストシステムはiogousを試験投入した結果、最終的に従来のバナー広告の5倍以上のパフォーマンスを実現したという。
「バナー広告は1時間で飽きられ、どんどんCTRが下がっていく。多くの場合1人のユーザーに同じバナーを5〜10回くらい見せているが、実際は3回で飽きられている。いままでのバナー広告の運用はもったいなさすぎる」(田中氏)
検索連動型広告はユーザーの欲望を検索キーワードという形で入手して、それにマッチする広告を配信することで高いパフォーマンスを実現した。iogousも同じようにユーザーの欲望を察知できるという。バナー広告は検索キーワードのようなテキストに加え、ビジュアルの要素もあるため、より人間の欲望に近づけるというのが田中氏の持論だ。
さらにiogousを使えば、複数セグメントのユーザーに適したバナー広告を配信できるという。不動産会社を例にとると、不動産広告はビジュアルが豊富で、かつ訴求ポイントが複数にわたる。特に都心部では独身男性、世帯家族の両方がターゲットになるが、従来のバナー広告では同時にリーチすることはできなかった。iogousは独身男性、世帯家族の両方に最適なバナーを自動生成できるという。
田中氏は、iogousはバナー広告のパフォーマンスを向上させることで広告主とメディアの双方にメリットをもたらす仕組みだと強く訴えた。「日本のディスプレイ広告(バナー広告)市場は1700億円。その1割を改善しても170億円になる。できるだけ多くのバナー広告を改善したい」。
すでにメディア企業20社、広告主企業26社がiogousの採用を決定しているという。9月には100億インプレッション分のバナー広告を配信できる大規模広告配信システムを構築する予定だ。
Fringe81は6月〜9月の間、iogousのデビューキャンペーンを実施する。1クライアントあたり1キャンペーンが対象で、バナー広告を制作し、CTR上位30個を納品する。広告運用代行とインプレッション/CTRの日別レポート作成も込みで月額20万円からとなる。
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