NHKは2009年度からスタートした3カ年経営計画「いつでも、どこでも、もっと身近にNHK」において、重要取り組みテーマのひとつにテレビ、PC、携帯電話それぞれにおけるコンテンツを強化するという「NHK on 3-Screens」(3スクリーンズ)を掲げた。それを実現するため6月に新たに発足した放送技術局メディア技術センター(クロスメディア)は、放送・通信融合時代の新たなサービス開発に向けて活動を進めている。
メディア技術センターの目的は、デジタル放送時代に適した新サービスや3スクリーンズを展開する上で必要な技術を開発すること。かつての放送技術局運行技術部(デジタルメディア)を母体とし、技術開発力を強めるべく体制が強化された。
NHKはPC向けに動画配信サービス「NHKオンデマンド」を、携帯電話向けにはワンセグ放送を配信中。しかし「それぞれ重要な取り組みではあるが、3スクリーンズのすべてではない」とメディア技術センター部長の山内雄敦氏は言う。例えば、PC向けには自社特設サイトでも動画を配信しているほか、7月の皆既日食のときにはYouTubeに動画を提供した。
こうしたサービスの拡大は、同じく3カ年計画内で掲げられた「接触者率(放送以外も含め、1週間に5分以上NHKに接触した数)向上」を目指す意図が大きい。目標では、2008年度に76.9%だった接触者率を2011年度までに80%へと引き上げるとしており、まずはコンテンツへの接触機会を多く提供したい考えだ。
皆既日食の動画提供については自社の特設サイトも用意したが「YouTubeを使うことでより多くの視聴者に貴重な動画を見ていただき、NHKサイト、あるいはNHKのニュース番組などへの誘導にもつながった」(山内氏)。実際、皆既日食用の特設サイトは通常のNHK運営サイトの数倍のアクセスを記録。またYouTubeでの再生回数も大きく伸び、再生回数の最も多い動画では、再生数が100万回を突破した。
NHKがYouTube活用に踏み切った背景には、YouTubeの違法アップロード対策システム「ビデオID」の存在がある。投稿された動画のうち、自社の権利を侵害しているような動画については非掲載にできるため「違法に動画を使われることを批判するだけではなく、その影響力の大きさを何らかの形で還元することはできないかと考えた」(山内氏)。実際、皆既日食の動画では報道メディアとしての存在感を世界に示すことにつながった。
「とにかくNHKコンテンツにさまざまな場で接触してもらうこと。ネットなど、若い世代が中心となるメディアで接触率を高めるのは相当ハードルが高い。それを実現するためには、さまざまな手段を講じる必要がある」(山内氏)。NHKの接触率は、放送外のリーチに限ると現状18%程度にすぎない。これを25%程度まで高めるのが目標だ。テレビ離れが懸念される中、新たに発足したメディア技術センターの活動には局内の期待も高いという。
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