ニューヨーク発--Amazonの最高経営責任者(CEO)であるJeff Bezos氏は、Googleが目論むデジタル出版事業への進出を好ましく思っていない理由について、明らかにしようとしなかった。
「私たちはこの問題について、断固とした見解を持っている。そして、それを明かすつもりはない」とBezos氏は「Wired Business Conference」で、インタビュアーのSteven Levy氏に話した。「しかし、明らかにその和解内容は、われわれの見解において、見直しが必要だ。そして、実際に見直しがなされている」(Bezos氏)
予想外の展開や形勢の逆転、遅延に満ちた法廷闘争を通して、Googleは「Book Search」計画を推し進めようとしている。この計画が上手くいけば、Googleは絶版書籍のデジタル版への独占的なアクセス権を獲得できる可能性がある。そうなれば、Levy氏が指摘したとおり、「Kindle」、そして大型化された新版の「Kindle DX」を対象に、あらゆる言語で出版されるあらゆる書籍を提供するというAmazonの目標が阻害される恐れがある。そして、Amazonはこの点において、Googleに若干の不満を抱いているようだ。
「さまざまな勢力が、この問題に注目している。彼らは、大規模な著作権侵害行為を表彰するようなことは誤りであり、何らかの対策を講じる必要がある、と言っている」とBezos氏は述べた。
Bezos氏は同カンファレンスで、「Disruptive by Design」という副題のついた講演を行い、Amazonが小売業界に改革をもたらした歴史、そして電子書籍リーダー「Kindle」で出版業界を変革しようとしている現状について話した。Bezos氏の講演内容の大半は、テクノロジ企業のCEOが大企業や従来型メディア関係者に授ける典型的なビジネスアドバイス(「重大なことには頑固、細かなことには極めて柔軟であれ」「長期にわたって誤解されることを喜んで受け入れろ」)で占められていた。しかし、Bezos氏は、Kindleがもたらす変化に対する自身の考えについても、数分間話した。
低迷する出版やメディア、広告業界における古くからの世界の中心地であるニューヨークにおいて、Bezos氏の言葉は特に大きな意味を持っていた。なにしろ、Kindleは非常に好調である。Bezos氏によれば、Kindleが発売されてから18カ月しか経っていないにもかかわらず、AmazonでKindle版と印刷版の両方を販売している30万点の書籍のうち、Kindle版の売上高は印刷版の35%に達しているという。
「Amazonの社員は、この数字に驚愕している」とBezos氏は述べた。
しかし、Bezos氏は、Kindleだけで新聞業界を救えるという約束はしなかった。
「Amazonには黙っていても売れる商品があるなどと私は考えていないし、そのような印象を与えたくもない。しかし、Amazon、そして電子書籍リーダーを取り扱うほかの企業がことを上手く運べば、新聞もその恩恵を受けることができるだろう」とBezos氏は述べた。「また、書籍リーダーを持つ企業が複数出てくると思う。そして、複数の勝者が出現する余地があると思う」
Wired Business Conferenceにおける多くの講演者同様にBezos氏は、この数年で物事がいかに変化したか、そして、そのことで商習慣の大幅な見直しがすべての産業でいかに求められているかを語った。この件について同氏は、メディアビジネスについて取り上げた。
「残念ながら、雑誌、新聞、出版業界などすべてで同時に複数の大きな問題が発生し、衝突しあうという状態になっている。これらの問題には最近では、悪い状況をさらに悪くする不況などが含まれている」と同氏は述べた。「しかし、わたしの見解において最大の構造上の問題は、広告スペースの供給過多だ。これは、決してなくならない基本的な問題だ」(Bezos氏)
しかし、同時にBezos氏は、カンファレンスのテーマを踏まえながら、非常に大きなチャンスもあると述べた。
「業界に参入する際に最も重要となる障壁のいくつかは解消されており、永久的な解消となっている」(Bezos氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事をシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。 原文へ
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