携帯電話で視聴中の番組をテレビでも見られる--NHK技研公開

 5月21日に開幕するNHK放送技術研究所公開(技研公開)が、一般公開に先駆けて5月19日に報道陣に公開された。その様子を紹介する。

 今回は、ここ数年の柱であった超高精細テレビシステムやスーパーハイビジョン関連展示のほか、通信系を活用した映像配信サービス関連の展示が目立つ。

 1階エントランスに展示された「放送通信連携IPTVサービス」は、デジタル放送の機能であるデータ放送を窓口とする新システム。これまで、テレビ端末から「NHKオンデマンド」のようなサービスを利用する場合にはアクトビラやJ:COM(ジュピターテレコム)といった既存プラットフォームが必要だった。実用化にはデジタル放送に関する新たな技術仕様策定が必要となるが、放送局自身が直接的にサービスを提供できるメリットがある。

「放送通信連携IPTVサービス」 「放送通信連携IPTVサービス」のブース

 PCや携帯端末など受信機が多様化していることに対応するとともに、有料サービスを利用する上での障害になりがちなユーザー認証作業を軽減する目的で研究されたのが、「映像配信サービスにおける複数受信期間認証情報連携」だ。会員ユーザーが持つ受信機の間でサービスの利用状況や視聴状況などを共有できる。さらに、視聴端末を切り替えた際のユーザー認証の操作が不要な点が特徴だ。これにより、例えば携帯電話で購入した番組を移動中に視聴しつつ、自宅に戻って番組の続きを大画面テレビで視聴する、といったことが可能となる。

 放送局によるIPTVをより積極的に推進しようとする提案が「Curio View」。視聴中の番組からメタデータを拾い出し、それを元にお勧めコンテンツを自動検索して表示する、というもの。提案では有料映像配信サービスとの連携のほか、大容量データ保存端末が普及することを見越して、ユーザーが過去蓄積した番組の中からお勧めコンテンツを検索するということも想定していた。

Curio View 「Curio View」

 これらのIPTV関連サービスの背景には、「NHKだけが独自に展開しても意味がない」(説明員)との考えがある。実際、各研究には民放局や大手家電メーカー、通信事業者などが共同で名を連ねている。また、Curio Viewでは必須となるメタデータを、映像認識、音声認識技術などを活用して自動生成する「メディアエディタ」を開発するなど、共通フォーマットがなく横の連携がしづらい現状への対応策も検討されていた。

通信利用のリスク回避策も研究

 NHKでは、通信を活用したサービス展開を加速させる一方で、それに伴って発生する新たなリスクへの対策にも取り組んでいる。

 例えば、映像配信サービスの開始に伴って放送局側が持つようになる大量の個人情報を保護すべく開発されたのが「プロバイダ認証」。いわゆる「なりすまし」による偽の個人情報リクエストをデジタル署名によって防止する。また、第三者にその署名鍵が漏洩しても、即座に更新することで、署名つきの偽リクエストをブロックできる。

 契約することなく不正に有料サービスを利用したユーザーを追跡できる暗号技術も新たに開発した。これは有料サービスの再生に必要な、正規契約を伴う復号鍵を使って不正な受信端末を製作した場合、その元となった復号鍵から複合鍵を漏洩させた契約者を特定するというもの。契約情報を端末間で持ち出す際に物理的手段を使う手法には極めて有効とのこと。また、契約者本人が意図せず復号鍵を紛失した場合の対策として、利用可能時間も設定できる仕組みとなっている。

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