音楽バンドNine Inch Nailsのリーダーを務めるTrent Reznor氏によると、英国のバンドRadioheadがアルバム「In Rainbows」で行った革新的なプロモーションは、「不誠実」で「おとり販売」に近いという。
Reznor氏がこのような発言をしたのは、オーストラリアの放送局Australia Broadcasting Corporationから現地時間3月10日にインタビューを受けたときのことだ。
Resnor氏は次のように述べている。「(Radioheadが)新手のプロモーションで使ったやり方は、確かに巧妙だったと思う。しかし、彼らがやったことをよく見れば、おとり販売のようなもので、従来のレコード販売を促進する方法として『MySpace』並みの音質のデジタル楽曲に金を払わせたのだ」
In Rainbowsのプロモーションは、大手レコード会社のバックアップを受けずに楽曲をダウンロード配布して、ファンがそのデジタルアルバムの価値に見合うと思う料金を支払うというものだった。レーベルシステムの枠を打破する行動として、Radioheadは各方面から称賛された。
しかし、Radioheadのマネージャーは、同バンドが似たようなプロモーションに再度トライする可能性は低いだろうとも述べている。Radioheadはこのプロモーションを終了し、従来の販売チャンネルを通じてIn Rainbowsの販売を開始した。
Reznor氏は、Australia Broadcasting Corporationのインタビューで次のように語っている。「何ら間違った行為ではないが、称賛されているほど革命的なことだったとは思えない。私には不誠実な行いのように感じられる。『史上初』だったということだけが売りで、そのおかげでニュースの見出しを飾ったのだ」
Reznor氏の発言には一理ある。Radioheadが行ったような音楽のダウンロード販売が新しい可能性を切り開いたことに議論の余地はないが、音楽を配布する新しい方法の探求に断固として取り組んでいくのかという点になると、物足りないものがある。
実のところ、Reznor氏は時として激高することがあり、常に歯に衣着せぬ物言いをする人物だが、誰よりも音楽ファンと仲間のミュージシャンのために行動している。
Nine Inch Nailsは2008年3月、36曲のインストルメンタル作品を収録したデジタルアルバム「Ghosts I-IV」を発表し、さまざまな形式で配布を開始した。9曲を無料のサンプルとしてダウンロード配布するほか、全曲入りのデジタルアルバムは5ドルで販売する。また、2枚組のCDを基本にしたセットが3種類あり、価格に応じて、CDのほかにブックレットやBlu-rayディスクなどがプラスされる。発売から1週間ほど経って、Reznor氏は「The Chicago Tribune」紙の取材に応え、ダウンロード件数が78万1917件に達し、160万ドルを売り上げたと語っている。
Radioheadは、おそらくこれよりも多く売り上げ、自主流通を検討しているアーティストにとって価値の高い情報を集めた可能性が高い。ただし、Reznor氏と違って、Radioheadは売り上げを公表していないため、われわれには知るすべがない。
Nine Inch NailsやRadioheadによるプロモーションに関して、実に残念なのは、Reznor氏を別にすれば、インターネットの利用を考えたり、従来のビジネスモデルに代わるものを探そうとするアーティストが音楽業界にほとんどいないことだ。
ここで話題にしているのはロックンロールなのだ。ロックンロールはかつて、反逆者やならず者の領域だと言われていた。現状を打破しようと後に続くアーティストが出てこないのはなぜだろう?
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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