日本レコード協会(RIAJ)は2月19日、レコード会社が許諾した正規の音楽配信に識別ラベルを付与する「エルマーク」の導入を開始したと発表。都内で報道関係者向けの説明会を行った。
同制度は、レコード会社がパソコンや携帯電話のネット配信向けに提供する音源やビデオクリップを対象に、著作権を侵害した違法コンテンツではないことを証明するための認証制度。対象となるのは携帯電話とパソコン向けのダウンロード配信で、ストリーミング配信は今回対象には含まれていない。
運用方法は、同協会が配信事業者に対して認証マークを発行。配信サイトはトップページの上下や楽曲の購入ページにマークを表示し、ユーザーに対して違法に配信を行っているサイトとの区別を明確にする。協会が認めていない違法配信サイトなどがマークを無断で使用した場合には、同協会が商標権者としてマークの使用差し止め請求を行う。
同協会によると、2007年の違法音楽ファイルの推定ダウンロード数は年間で約3億9900万ファイル、ファイル交換ソフトの利用実態はネットユーザーの約2割におよぶという。このような現状に対して、文部科学省の文化審議会著作権分科会の私的録音録画小委員会は2007年秋、著作権法第30条で認められている「私的複製」の適用範囲から、違法サイトからのダウンロードを除外する方針をまとめた。しかし、その後寄せられたパブリックコメントでは「ユーザーが違法サイトと適法サイトを区別するのが難しい」とする意見もあり、利用者保護を観点とした適法マークの推進が検討課題とされた。
ソニー・ミュージックエンタテイメントの取締役で、同協会私的録音委員会委員長代行兼違法配信識別ワーキングチーム座長を務める、秦幸雄氏は「特に学生の間で『着うたはタダ』認識がある。携帯電話への検索エンジンの導入や、掲示板の普及により、違法ダウンロードの数はものすごい勢いで増加しており、正規ビジネスの成長を阻害している。いまやシングル盤はダウンロードするのが常識化しており、シングル盤の売り上げは激減。被害はダウンロードだけでなく、音楽業界全体が打撃を受けている」と業界の現状を説明した上で、「いったん無料の認識が根付いた人はなかなか購入しなくなるもの。『今ならなんとかなる』という思いで、具体的な対策のひとつとして今回の制度を導入した」と経緯を語った。
2008年2月19日現在で同制度の運用に参加するのは、レーベルゲートなど音楽配信サービス会社のほか、ソニー・ミュージックネットワークなどレコード会社12社を含む110社。現時点では「iTunes」を運営するアップルは含まれていないが、「現段階で趣旨は理解してもらっているが、表示方法について説明している段階」(同協会専務理事・生野秀年氏)とし、今後国内約120のすべての音楽配信サービス事業者への導入を目指すという。さらに、他のコンテンツ業界にも導入の働きかけを行っていくとし、すでに日本映画製作者連盟が採用を検討中であることが明かされた。
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