コンピュータを愛してやまない「コンピュータカウボーイ」が自身の腕を披露するイベント「天下一カウボーイ大会」が12月23日、東京秋葉原UDXにて開催された。会場にはコンピュータグラフィクス(CG)業界のノーベル賞ともいわれるクーンズ賞を2005年に受賞した東京大学教授の西田友是氏から現役の大学生までさまざまなプログラマーが集まり、自ら開発したソフトやロボットなどを披露した。
コンピュータカウボーイとは、ウィリアム・ギブスンがSF小説の中で凄腕のプログラマーなどを指して使った言葉。天下一カウボーイ大会は、そんな「カウボーイ」たちが腕を競う場として開かれたものだ。ただし競技によって順位を決めるわけではなく、それぞれが開発したものを披露することで「互いのスキルを競いあい、互いを刺激し合い、新技術に感動し、彼らの高度な技に驚嘆する場を提供する」(主催者の電脳空間カウボーイズ)というもの。
「コンピュータ業界は若い人から見たら、ちっとも格好良くも新しくもないものになっているのではないか。コンピュータが面白いと、小学生や若い人たちに訴えていかないといけない。コンピュータカウボーイの生き方を肯定してあげて、『僕はここにいていいんだ』という気持ちになってもらいたい」と特別協賛したユビキタスエンターテインメント代表取締役社長の清水亮氏は狙いを話す。
イベントは東京大学大学院 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻 教授の西田友是氏の講演で幕を開けた。西田氏はまだCGという言葉がなかった1970年ごろからCGの研究を開始。特に光源の形や反射光を計算に入れた照明シミュレーションに関して、長年研究を続けてきた。
「当時はコンピュータで絵を描くことが学術研究だとは認められず、照明設計などの理由がないと研究できなかった」(西田氏)と苦肉の策だったとの裏話を紹介。しかし、西田氏を中心とした研究が進んだことで、日本発のCG技術も数多く生まれたという。
CG研究をする上で、西田氏が最も「シミュレーション技術のすばらしさを感じた」と話すのが宇宙から見た地球の姿をシミュレーションしたものだ。空気中の粒子の散乱特性を踏まえて地球の色を計算したところ、太陽の位置によっては空気の端が強い赤に表示されたという。西田氏は最初いぶかったが、実際に宇宙からこの光景を見た宇宙飛行士の毛利衛氏から「こんなに明るくなるんですよ」と言われ、「見たこともないものも計算で見られる」(西田氏)と感動したと話した。
現在、研究室には20人の学生がいるというが、「秋葉原の文化が世界に浸透して、西田研に外国人がいっぱいきた。とくに電車男を見て日本語を勉強したという学生が多い」と、7人の外国人の学生がいると紹介。会場が秋葉原UDXだったことから、「秋葉原には感謝しています」と笑いを誘った。
なお、西田氏は自身のサイトで研究成果の画像や動画を公開している。
続いて合計14名の開発者が、それぞれ開発したソフトやシステムについて紹介した。ほとんどがこの大会向けに開発されたもので、数週間から1カ月程度で作られたという。
会場を最も沸かせていたのは、グルコースの安達真氏が作成したメディアライブラリ「MondoLibrary」だ。動画を集めすぎた人向けの動画管理ソフトといい、1つの動画内の複数のサムネイル画像を抽出したり、動画内の音声波形から最も“盛り上がって”いる部分を判断して、そこから再生できたりする機能を備える。ただし「最も盛り上がっている部分から見ても面白くない」(安達氏)として、機能を調整中だ。「来月くらいに公開しようかなと思っている」という。
ソフトアドバンスの竹村伸太郎氏は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の2006年度下期未踏ソフトウェア創造事業「未踏ユース」で採択された「ブロガーのための動画広告配信システム」を紹介。スライドショーや動画に対して、簡単に映像効果をつけられるというものだ。初心者でも直感的に使えるようなユーザーインターフェースが特徴で、フリーソフトとして公開している。
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