ウェブカメラとパソコンさえあれば、誰でもライブ映像を流せる放送局が作れるUstream.TV。YouTubeに次ぐ動画配信サービスを展開する企業として今、最も注目されている一社と言える。
このほど開催されたIT関連ベンチャー企業の経営者や投資家が集まるイベント「Infinity Ventures Summit(IVS) 2007 Fall」に参加したUstream.TVの創業者であるJohn Ham氏に話を聞いた。
これまで、ライブ映像の配信サービスはありませんでした。インスタントメッセージや「Skype」などはありましたが、これらは1対1の少数をターゲットにしたもの。ライブ映像配信であれば、1対数万、数十万人の規模になるサービスを展開できるし、そういうサービスがなかったので、そこに着目してビジネスを立ち上げたわけです。
さまざまなサービス名称を考えましたが、「YouTube」はサービス開始当時から知られているサービスだったので、意識はしていました。「YouTubeの次に来るのはライブ感のあるサービスだ」と。
「YouTube」のブランド名は非常に価値があると思っていたし、ビデオサービスであることもすぐに想起させることができる。そのため、YouTubeを連想させるサービス名称であれば、潜在ユーザーを掘り起こしつつブランディングが図れると考え、「Ustream.tv」というサービス名にしました。
実は、これには面白い話があります。
最初のマーケティングとしては、私が米Los Angelesに引っ越した様子を24時間、コンテンツとして放映しました。そして、次にLos Angelesに住む女優のCourteney CoxやモデルのTyra Banksなどセレブの生活を30日くらい追いかけて流し続け、一般的な話題を取り上げる米マスコミの興味を引き付けることに成功しました。
2番目はブランディング戦略として、著名な存在と協業しているように見せる工夫をしました。それが政治家とのタイアップです。Barack Hussein Obama Jr、Hillary Rodham Clinton、Johnny "John" Reid Edwardsなど候補者のライブ映像を配信することによって、ユーザーの認知度が高まっていきました。
実際には、短期的なプランはありませんでした。しかし、今後は成長するための収益化戦略を考えていかなければならない段階だと思っています。その手法としては、ユニークなものを手がけたいと思っています。
通常では広告収入と考えがちですが、我々はコンテンツを利用したスポンサーシップという形を取っていきます。たとえば、セレブのコンテンツとセレブの出ている映画のコラボレーションなどです。先日、「Fred Claus(フレッド・クローズ)」という映画が公開されましたが、そのプレミア上映日の様子をライブで流すなど、映画会社とタイアップをして成功を収めました。今後もそのような形で収益につなげていきたいと考えています。
実は大好きな質問です(笑)。YouTube創業者のChad Meredith Hurley氏とSteve Shih-chun Chen氏とは仲良しで、この件について話をしたことがあります。彼らの答えは「俺達は忙しい。特に、サービス展開の中で法令違反の可能性を指摘されている問題の裁判や収益モデルの構築で忙しい」というものでした。それが何を意味するのかは、汲み取って下さい。
また、USTREAMが何を考えているのかというと、Googleは検索サービスで知られていますよね。検索絡みのサービスでは何をやっても「Powered by Google」という名前が出てくる。USTREAMも同じように、ライブ映像配信絡みのサービスでは何をするにも「Powered by USTREAM」という名前が出る会社にしていきたいですね。そのためには、USTREAMがプラットフォームとして使ってもらえるようにならなければならない。
今考えている戦略は、パートナーシップです。現在、パートナーシップを組んでいる会社のほかにも、MySpaceやFacebookなどともコラボレーションしていけるように働きかけているところです。それらが今後の成長をけん引する上で非常に重要なことになっていくでしょう。
もちろんなれるでしょう。ライブ映像配信は検索と同程度の需要があると思えないかもしれませんが、なりたいという希望だけで言っているわけではありません。これには理由もあり、予測もそれなりに立てています。
マネタイズの問題が一度軌道に乗れば、USTREAMは大きな収益を生むビジネスモデルです。リッチメディアのアプリケーションとも組めればさらに可能性も広がり、利益も出る。ですから、Googleと同じサイズになれるという予測は十分に立つのです。
実は今まで、日本については考えていませんでした。しかし、分析してみると日本のユーザーが多いことが明らかになってきました。今はアメリカの市場で一番になることが最優先としており、リソースを分散させるのは危険だと感じています。しかし、良い戦力的なパートナーシップが組めれば、日本市場参入についても積極的に考えていきます。
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