政府が「コンテンツ立国」というスローガンの下、日本のコンテンツ産業の育成に力を入れている。しかし海外で成功を収めている作品や業界はごく一部だ。世界で通用する作品を生み育てるのに、何が欠けているのだろう。
9月21日に、東京ゲームショウ2007併催としてホテルニューオータニ幕張で行われた「コ・フェスタ フォーラム in TGS 2007」。エンターテインメントグローバルミーティングと題して、各界で活躍するキーパーソンが世界のコンテンツ市場の現状や日本においての課題などについて、熱い討論を繰り広げた。
討論に参加したのは、香港のインディペンデント映画制作会社Ediko Filesの社長で「HERO」「LOVERS」「僕の彼女を紹介します」などのヒット作をプロデュースしたBill Kong氏、オズ代表取締役で、「帝都物語」「リング」「呪怨」「犬神家の一族」などの邦画だけでなく「呪怨」のハリウッドリメイクなども手がける一瀬隆重氏、TBSテレビ 事業本部 コンテンツ事務局 映像事業センター 映画事業 映画プロデューサーとして「黄泉がえり」「ゼブラーマン」「下妻物語」「どろろ」などを手がけた平野隆氏、エイベックス台湾董事総経理兼エイベックスチャイナ総裁特別顧問としてアジア圏での音楽展開を手広く扱う宮崎伸滋氏、そしてスクウェア・エニックス代表取締役の和田洋一氏の5名。モデレーターは日経エンタテインメント! 編集委員の品田英雄氏がつとめた。
まず、日本のコンテンツについては一同口を揃えて魅力的であるとした。ただ、映画に関しては一瀬氏が「日本の映画が海外で成功するのは難しい」、平野氏が「日本ではスタームービーのような特定カテゴリの映画しかフィーチャーされておらず、世界に進出する作品は少ないように思う」と難しさを述べる。
一方、音楽に関しては宮崎氏が「アジア圏では日本のカバー曲のヒットが多い。日本の作家がアジアでヒットを狙うケースも増えてきた」とした。また、ゲーム業界からは和田氏が「コンピュータゲームで日本がリードしていたのは偶然によるところが大きい。たまたま日本が多数のゲーム機を作り、それにリンクするソフトウェアメーカーが育ってきた。ただ、日本はモノを作る力はとても強いと思う」と見解を述べた。
ここで品田氏から日本のコンテンツ消費額は2位だが、圧倒的に輸入超過を起こしている現状が説明され、続いて日本の人材について質問が出た。ハリウッドに拠点を持つ一瀬氏は「米国では映画は産業として成立しており、勝ったときには多くの金が入るビジネスとして成立している。一方日本ではようやく産業といえるレベルになった程度」と分析。
テレビ局社員の平野氏には「映画を作りたいが、就職するなら映画会社とテレビ会社のどちらか?」という質問が投げかけられた。平野氏は「どちらかといえばテレビ会社。現在日本映画を作っているのはほとんどテレビ局。映画会社は制作ではなく興業を第一に考えている」との説明があった。ここで一瀬氏が「そもそもなぜ就職するのか。映画を作るのにどこかの会社のサラリーマンである必要はない。こうした考え方自体が日本の映画界をダメにしている一因」と喝破した。
続いてBill氏から香港の人口が500〜600万程度で、ここで映画の市場は成立しないため、ハリウッドに出て行かざるを得ないという事情が説明される。また「アジア人が主演する映画は成功しないといわれているが?」という質問には「それは真実ではない。グリーン・デスティニーのようにヒットする作品もある。純粋にマーケティングの問題」と反論があった。また、音楽については宮崎氏からも「欧米では英語で歌わないとヒットしないが、アジアではむしろ日本語の響きのほうがあこがれ。ただ、日本のものをそのまま持って行っても成功しない。現地の風土を取り込むことが重要だ」という意見も出た。
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