ソフトバンクモバイルが6月に発売した、下り最大3.6Mbpsの高速無線通信が可能なCF型データ通信カード「SoftBank C01SI」。高速無線通信規格のHSDPAに対応したCF型のデータ通信カードは現時点で国内唯一だ。この端末が実現した陰には、英国の半導体ベンチャーの存在があった。
そのベンチャーは英国ブリストル市に本社を置くIceraという企業だ。自社で工場を持たず半導体の設計に特化したファブレス企業で、日本では横浜に支社がある。2002年に創業し、欧米5社のファンドから約118億円の資金を集めた注目ベンチャーだ。
Iceraの強みは、HSDPAの無線通信に必要なモデム機能をソフトウェアで実現した点にある。これまで、複数のハード論理ブロックを集積しなければならなかった。このため、チップサイズが大きくなりコストも高くなっていた。
Iceraはこれを、DXPという小型低消費電力の1チップに集約したのだ。機能はすべてソフトウェアで制御しているため、より高速な規格に対応させる際にもソフトウェアのアップグレードだけで済む。これを商品化したのがC01SIに採用されたチップ「Livanto」だ。Icelaによれば、他社製品に比べて性能は約2倍、大きさは約5分の1という。
C01SIは、Livantoが世界で初めて採用された製品となる。これには、ソフトバンクモバイルがかつてボーダフォングループだったことが大きく影響している。
Icera創立者の1人で、マーケティング担当バイスプレジデントを務めるナイジェル・トゥーン氏によれば、英Vodafoneグループとは創業当初から提携関係にあったという。日本市場で苦戦していたVodafoneは、NTTドコモに対抗するためにはHSDPAの技術が必要だと感じていた。さらに、「ドコモがNECなどの日本メーカーと密接な関係を築いているように、Vodafoneも技術力がある企業と手を組んで業界をリードしたいという思いがあった」(トゥーン氏)ことから、強いパートナー関係が生まれたようだ。
Icelaは今後2年以内に上場する計画だ。HSDPAは欧州でもサービスが開始されており、米国でも少しずつだが第3世代携帯電話が普及し始めている。この波に乗り、大きく事業を拡大する考えだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス