JTB中部は5月30日、旅をテーマにしたソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「マタタビ」を公開した。人ではなく、それぞれの人の旅同士をつなげることで、新しい旅の魅力や楽しさをユーザーに発見してもらうことを狙う。
ユーザーは「タビバコ」というフォルダの中に、自分の旅行写真や日記などを掲載する。それぞれのタビバコや写真、日記などにはタグを付けることができ、タグを介してユーザーの旅の思い出がつながるという仕組みだ。
SNSではユーザーが興味のあるトピックごとにコミュニティを作ることが多いが、マタタビではあえてコミュニティ機能を搭載していない。「例えば“北海道”というコミュニティだと、北海道の話だけでしか盛り上がらない。そうではなく“北海道 カニ”の写真を掲載した人が、カニというキーワードで“越前 カニ”に出会うといったことがしたかった」とJTB中部 経営企画課 グループリーダーの長縄将幸氏は話す。
「コミュニティは言わばパッケージ旅行のようなものだ。これまで旅行会社はパッケージ旅行が中心だったが、最近では自由にホテルや飛行機を組み合わせる個人旅行が人気だ。本来、旅は自由なものであり、マタタビでもユーザーである旅人を縛りたくない」(長縄氏)
このため、マタタビでは外部サービスとの連携にも積極的だ。マタタビはmicroformatと呼ばれる仕様に準拠しており、専用アプリケーションを使うと簡単に外部サービスと連携できる。例えばほかのユーザーの名前や連絡先といったデータをvCard形式で抜き出して自分のOutlookに追加できたり、マタタビに掲載された写真から、同じタグのついた写真をFlickrで探せたりする。
また、独自機能として、写真や文字の位置や大きさなどを自由に配置できる、Flashを使った日記作成ツール「リッチエディタ」がある。これを使って作成した日記はそのまま外部のブログに貼り付けられるようにしている。
マタタビが生まれたきっかけは、JTBが持株会社制に移行したことにある。2006年4月からJTBは地域ごとに事業会社を置く体制にし、JTB中部が誕生した。これを機に「ネットを使って何か新しいことをしたい」(長縄氏)と考えていたという。
長縄氏によれば、旅の楽しみは大きく分けて3つある。出発前に旅行の計画を立てること、実際に旅行にいくこと、そして旅行の後に写真などを見せ合って思い出をほかの人と分け合うことだ。しかしJTBではこれまで実際の旅行の部分しか提供できていなかった。「これまでは旅のトータルプロデュースができていなかった。もっと思い出が続く限り、旅の楽しみを提供したい」(長縄氏)。そこで、旅の思い出をつなげるというマタタビの構想が生まれた。
JTBは持株会社制への移行と同時に、「交流文化産業への進化」を掲げ、旅行だけでなく人や文化の交流分野へと事業範囲を広げている。「既存の旅行ではない、旅の本質をプロデュースするような新しいことをやっていこうという全体の方針がある。マタタビは文化や人、価値観の交流が可能な場になる」(長縄氏)
サイトの収益は広告で上げていく考えで、ほかの旅行会社の広告も掲載していく方針だという。「『このサービスでJTBの商品がどれだけ売れるんだ』と言われたこともある。しかし、既存事業の延長線上では新しいものは生まれない。違う切り口で新しいことをするためにも、企業が顧客を囲い込むためだけのサイトにはしたくない」(長縄氏)。バナー広告のほか、キーワードへのスポンサード広告などを検討しているとのことだ。
将来的には、マタタビでユーザーが行きたい旅行を募り、最も人気のある旅行プランを実際に提供するといったことも考えているといい、新しい旅行のヒントを得る場にもしていく考えだ。
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