ワシントン発--米国には、各州政府がインターネットアクセスに課税することを禁じる時限立法がある。その期限切れが数カ月後に迫る中、この禁止措置を恒久法にするか、あるいは解除して課税を認めるべきかをめぐる議論が、米国時間5月22日に連邦議会下院で始まった。
問題になっているのは、2007年11月1日に期限切れを迎える法律だ。この法律が最初に施行されたのは1998年のことで、DSL(デジタル加入者線)、ケーブルモデム、および「BlackBerry」のようなワイヤレス通信サービスなどのインターネットアクセスについて、地方政府はこれを課税対象にできないと定めている。法律はさらに、従来型の店舗とは違った形式でオンラインで販売された物品に対して、地方政府が課税することも禁じている。ただし、オンラインショッピングでの売上税に関する言及はない。
米下院の商法および行政法に関する小委員会が招集した公聴会では、この禁止措置は残すべきだという声が、議員たちの間からあがった。
「インターネットは、出かけていって商品やサービスを購入する場所である商店街にたとえられないだろうか。または、そこに行けば本や資料を参照でき、情報が得られる図書館でもいい。だとすれば、われわれは商店街への入場や図書館への入館に税金をかけるようなことをしようというのだろうか?」と、Hank Johnson下院議員(ジョージア州選出、民主党)は疑問を表明した。
インターネット接続サービスを提供する業界は、以前から禁止措置の恒久化に向けた活動を行っており、議会の一部の支持も取り付けている。下院ではAnna Eshoo下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)がそうした法案を提出しており、上院でも同様の動きがある。
しかし、禁止措置を2年ないし4年延長しようとした以前の試みは、州や地方自治体側の支持団体の抵抗などに遭い、失敗に終わっている。各州政府の関係者は、州から極めて重要な財源を永遠に奪うことになるうえ、そもそも、生まれてまもないインターネットの商業化を促進するという法律の当初の目的は基本的に達成されているとして、禁止措置の恒久化には反対している。
全米知事会(National Governors Association:NGA)で連邦政府との関係調整を担当するディレクターであるDavid Quam氏は「この一時禁止措置が恒久化されると、ほかの業界も連邦法を盾にした州法による課税の免除を求めるようになり、引き返せない泥沼に陥るだろう」と話す。
Quam氏によると、NGAは禁止措置に制約を加え、有効期間を明確にして延長するという案を支持している。政府の会計検査官とテネシー大学の報告から、ブロードバンドの浸透度とインターネットアクセス税の有無との間には統計上の相関関係がないことが判明していると、Quam氏は話している。
だが、恒久的な禁止措置を共同で提案している下院議員66人の1人であるJim Jordan下院議員(オハイオ州選出、共和党)は、こうした主張には左右されない姿勢を見せている。「われわれの経済活動において、税金はあらゆるものに必ず影響を与える。この分野でも大きな影響を果たしてきたと思う」とJordan下院議員は語っている。
経済学者で、法律事務所Kimbell Sherman EllisのパートナーでもあるScott Mackey氏は、一般に経済学者は投資を妨げるおそれがある税金を嫌うものだが、インターネットの拡大を阻む可能性がある税金には、特に問題があると主張している。Mackey氏は、課税禁止の恒久的な延長を支持するインターネットサービスプロバイダー(ISP)連合の立場から、今回の公聴会で発言している。この連合にはいわゆる「バックボーン」プロバイダー、アプリケーションおよびコンテンツ企業が含まれる。
Mackey氏は議員らを前に「禁止措置の恒久化は、インターネットを介したコミュニケーションや商取引をさらに良いものにしようと考える起業家に対し、投資を支持する強力なシグナルを送ることになるだろう」と語った。
また、上院の委員会も、5月23日に予定されている公聴会で、この問題を議論することになっている。
これとは別に、ある議員は、インターネット上の商行為に対する売上税の徴収に関して、懸念を表明している。電子商取引の場合、物理的な拠点が存在する州以外からの顧客の注文について、企業は税金を集める義務がない。その結果、発展著しいEコマース企業から州税が徴収できないとして、各州政府は以前から不満を述べてきた。Bill Delahunt下院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は、この問題に対処する法律の制定をもう一度試みる予定だと語った。
また、インターネットアクセス課税の禁止措置について、Delahunt下院議員は「Eコマースの成長によって税基盤が脅かされる中、各州がいかにして公益事業を維持していくかという問題が最終的に解決されるまでは、一時的な禁止措置が必要だというのがわたしの立場だ」と、自らの見解を述べた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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