サンブリッジは5月18日、ブログやウェブサイトなどを開設せずにRSSフィードの生成・配信を行うサービス「MODIPHI」ベータ版を公開した。会員登録すれば個人・企業ともに無料で利用できる。
基本的にMODIPHIはウェブ上のCMSであるため、既存のブログサービスと比較すると概要がわかりやすい。ブログの場合、CMSに情報を入力すると一つのエントリーが生成され、その更新情報を伝えるためにRSSフィードが配信される。
それに対してMODIPHIは、ブログのようなウェブサイトをまったく生成することなく、“RSSフィードのみを配信するサービス”だ。
事業を率いるサンブリッジの小川浩氏によれば、上記のような「ブログを前提としないフィード生成・配信サービス」を“Edge Feeder”と呼ぶそうだ。そしてMODIPHIは日本初の本格的Edge Feederになるという。Edge Feederのメリットは何かというと、ブログを介さずにRSSフィードを生成するため、より細かな単位で情報を発信できるという点だ。
例えば、ブログの記事は通常、いくつかのカテゴリに分けられているが、特定のカテゴリの記事のみ読みたいという人もいる。社長ブログを読んでいるが、「プライベートな記事には興味がない。仕事関係の記事のみRSSフィードを受け取りたい」というニーズだ。このような場合に効果を発揮するのがEdge Feeder、つまりMODIPHIだという。細かくカテゴリ分けしたRSSフィードを配信できるからだ。
小川氏は都内で開かれた記者発表会で、「ウェブサイトは星、RSSフィードは光」と喩えた。その真意はこうだ。光がもともと星から発せられているように、RSSフィードもウェブサイトに付随して配信される。だが光が届けば星は必要ない--つまりRSSフィードさえ手元に届けばウェブサイトは不要になるという。
このような考え方に賛同するのが、エル・カミノ・リアル 代表取締役社長の木寺祥友氏だ。同社は携帯電話向けのRSSリーダーを開発しており、4月にはサンブリッジと提携した。木寺氏は「以前からRSSフィードだけをクロールしたかった」と述べ、MODIPHIで配信したRSSフィードをエル・カミノ・リアルのリーダーで読んで欲しいとアピールした。
MODIPHIはウェブサイトを作る代わりに、RSSフィードにあらゆる機能を盛り込んだ。その一例がマイクロフォーマットへの対応だ。イベントの告知やスケジュール管理、プロフィール、商品レビューなどの情報を、独自のマイクロフォーマットエディタを利用して書き込める。またポッドキャストを配信することも可能で、MODIPHIのサーバーで音声ファイル保存し、iTunesへの最適化処理も行う。
ただ、いかに広範な情報を持ったRSSフィードが配信されたとしても、すべてのインターネットユーザーがそれを使いこなせるだろうか。例えば、ブログで日記を書き、友人や家族に近況を報告している人もいるだろう。そんな人が明日からブログの更新を停止し、MODIPHIでRSSフィードのみを配信した場合、今後は読み手側もRSSリーダーから日記を受け取らなければならない。IE7やFirefoxなどのブラウザには標準でRSSリーダーが搭載されているものの、これはハードルが高くないだろうか。
これに対し小川氏は「WikipediaやYouTubeのようなWeb2.0系サービスも実際はリテラシーの低い人が利用している」として、一般ユーザーでもMODIPHIおよび各種RSSリーダーを利用できるようになるはずだと主張した。こういった考えから、サービス名には「RSS」や「フィード」といった言葉を加えなかったという。
MODIPHIの収益源はまだ定まっていないが、今後は企業向けのASP提供や他社ブランドでのOEM展開を見据える。ビジネスモデルとして最も似ているのは、「Movable Type」などのブログサービスを提供するシックス・アパートだという。
小川氏は前職のフィードパスでRSSリーダー「FeedPath」に携わってきた。サンブリッジでの肩書きは「E.I.R」。これは「Entrepreneur In Residence」の略で、つまりはベンチャーキャピタルに常駐して新規事業を立ち上げる“客員起業家”だ。サンブリッジ 代表取締役会長兼グループCEOのアレン マイナー氏は「MODIPHIはサンブリッジで初めてE.R.I制度を取り入れた事業だ。非常に大きな期待を寄せている」と語った。
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