「Business Blog & SNS World」が11月16日および17日、IDGジャパンの主催により大手町サンケイプラザで開催された。このイベントは、日本で急速に普及したブログやSNSをビジネスの視点でとらえ、そのマーケティングや広告、企業内外での活用におけるメリットや問題点、セキュリティに至るまでを網羅した内容となった。イベントでは20の講演やパネルディスカッションが行われ、どれも満席だった。
11月16日には、シックス・アパートの代表取締役である関信浩氏による「ブログ・オン・ビジネス〜企業ブログ成功の秘訣」というセッションが行われた。シックス・アパートはサーバソフトウェアの「Movable Type」やブログサービスの「TypePad」といったブログのシステムを早期から提供し、ビジネスブログに豊富な導入実績がある。また、最近では個人ユーザーに特化した新ブログサービス「Vox」を開始するなど、日本のブログ普及に貢献しているシックス・アパートへの興味はやはり高いようで、会場は早々に満席となった。
関氏はまず、シックス・アパートが設立されて以来の5年間の歩みを説明した。2001年10月にBenとMenaのTrott夫妻が「Six Apart」を設立し、Movable Typeを発表したことに始まっている。日本法人は2003年に設立され、現在ではMovable Typeに加えTypePad、Vox、「Movable Type Enterprise」など、目的別、利用形態別にブログサービスを提供している。
なお、社名はBenとMenaが同級生であり、誕生日も6日しか離れていないことから「Six Apart(6日違い)」にしたという。日本では「アパート」と付くところから、当初は不動産屋と勘違いした問い合わせ電話が数件あったそうだ。
続いて関氏は、「歴史は繰り返す」としてホームページとブログが普及した経緯をそれぞれ比較した。ホームページは当初、個人レベルで情報を発信するケースが多かったが、インターネットの普及によって企業も関心を示し、ホームページを開設する企業があたり前になった。さらに、それまで複数のソフトやツールを使って入手していた情報を、ウェブによって一本化されるようになった。これがイントラネットへの発展である。
また、ホームページが企業や商品を紹介する場というスタンスから、商品の販売までを行うEコマースへと発展し、その形態はBtoCからBtoBへと広がっている。このような1990年代のホームページの広がりは、「個人ホームページ」「企業ホームページ」「イントラネット」「Eコマース(BtoC)」「企業間Eコマース(BtoB)」と整理できる。PCやブラウザが普及して、誰でも情報を簡単に受け取れるようになったのが1990年代であった。ただし、企業ホームページは更新頻度が低く、半年や1年更新されないケースもあった。
「ブログもホームページと同じような経緯をたどっている」と関氏は言う。個人での活用から始まったブログは企業ブログへ発展し、さらにイントラブログ、Eコマースと組み合わせたECブログ、そして企業間ブログへと展開している。特に企業にとっては、ブログは簡単に更新ができ、タイムリーな情報発信が可能であるため、手間やコストを節約できるメリットの高いツールだ。
ブログユーザーはこの1年間で2.6倍に急増しており、研究機関などの予測よりもはるかに高い割合で普及している。関氏はこの急速な普及の理由として、「簡単」ということと「コミュニケーション」を挙げている。これは次世代ウェブに必要な要素であるという。次世代ウェブには、少ない手間とコストで「簡単」に操作、更新ができること、またブログに書き込んだ内容が検索エンジンなどの手段によって「見つかる」こと、そして「コミュニケーション」の3つの要素が必要だとしている。
コミュニケーションについては、ブログの場合はコメントやトラックバック、リンクなど複数の方法がある。ブログを書いたときに、このようなリアクションがあるとうれしく感じる。この喜びは人間として根本的なもので、情報交換によって満足感が得られるわけだ。また情報の面でも、これらのコミュニケーション機能によって類似情報が蓄積されていき、自分が書いた情報と同じような情報を探していくこともできる。このようなシステムは一過性のものでなく、長く生活に定着していく可能性を秘めている。
こうした一方で、ブログをメディアとして見た場合は、初めて完全な双方向性を備えたメディアであるといえる。これまで普及している新聞やテレビ、ラジオ、インターネットでさえも、基本的にはすべて一方向へのメディアであった。一方、ブログは単なるネット媒体のひとつではなく、完全な双方向性を持ち、情報が緩やかに偏在するメディアである。
個人ブログや企業ブログ、ECブログは、既存のメディアと連携するとともに、検索エンジンによってつながっていく。つまり、ブログは「媒体」と「目的地」の二面性を持っており、その影響力は少なくない。そのつながりに広告を介することで、ビジネスにも有効なメディアとなり得る。
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