「インターネットの成長は終わらない」--リビングに進出するヤフーの意気込み

岩本有平(編集部)2006年10月05日 00時05分

 「3年くらい前から構想は話していたが、だんだん実現が見えてきた」――。ヤフー代表取締役社長の井上雅博氏は、電子部品やデバイスの展示会「CEATEC Japan 2006」の基調講演において、現在同社が進めている「Yahoo! Everywhere構想」についてこのように語った。

 Yahoo! Everywhere構想は、PCやモバイルで利用しているヤフーのサービスを、テレビやカーナビ、ゲーム機、セットトップボックス(STB)などを経由して利用できるようにすることで、場所の制約を受けず、利用シーンに応じて最適なインターフェースでサービスを提供していくというもの。ヤフーが提供するアカウントサービスYahoo! JAPAN IDを利用することで、機器に制約されずにユーザー向けにカスタマイズされたサービスを利用できるようになる。

ヤフー代表取締役社長の井上雅博氏 ヤフー代表取締役社長の井上雅博氏

 その構想の一例として、「Yahoo! Digital Home Engine」を紹介した。これはヤフーとデジオンが共同開発したソフトウェアであり、PCやNASに組み込むことにより、DLNA規格の家庭内ネットワークとYahoo! JAPANを接続し、テレビからYahoo! JAPANのサービスを利用できるというもの。講演ではDLNAに対応したテレビから、リモコンを使ってヤフーのサービスにアクセスするといったデモンストレーションも行われた。

 米Yahoo!の「Yahoo! Go TV」も、全世界規模で推進されているYahoo! Everywhere構想の一環だ。Yahoo! Go TVは2006年1月のCESで発表されたもので、テレビに接続されたWindows XPベースのPCから、Yahooのコンテンツサービスにアクセスできるソフトウェアだ。テレビ用にカスタマイズされたユーザーインターフェース上に表示されるコンテンツをリモコンで操作できる。

 そのほか、日産自動車が提供する「CARWINGS」と連携して、Yahoo!メールで受信したメールを自動で読み上げるというデモも公開した。「車の中でもメールを受け取れる時代がやってきた」(井上氏)

 講演の中で、井上氏はモバイルインターネットの現状に触れて、ビジネスモデルの変化を訴える。「iモード」や「EZweb」など、キャリアごとに専用のサービスを用意し、専用サイトで課金を行う現在のビジネスモデルを「10年前のパソコン通信と同じ」と語り、膨大な情報に制限なくアクセスできる現在のインターネット同様、開かれたマーケットを作るべきだとした。そして、どのキャリアを使っても自由に情報を提供できる環境を10年以内で作りたいとした。

 ヤフーは9月28日に、ソフトバンクモバイルでモバイル向けサービス「Yahoo!ケータイ」を発表したが、これを「(現在の閉じたモバイルインターネットの環境から)開いたインターネットへの先導役」と語る。Yahoo!ケータイでのサービスについては、「まだまだ発展途上。ユーザーがケータイを通じてどういうことができると便利か、そして何をしたいのかを見てサービスを発展していく」とした。

 井上氏によると、この10年で日本のインターネット利用者は大きく拡大したという。ブロードバンドが普及し、インターネット普及率は6割以上になったほか、男女の利用者比率も50対50に近づき、利用時間も2000年の2倍以上となった。Yahoo! JAPANも10年間で成長し、キーワード検索とカテゴリ検索しかなかったサービスは100以上になり、利用者数は月間4500万人、1日12億PVという巨大ポータルサイトとなった。「1日100万PVで喜んでいたところから、10年でよく普及したもの」(井上氏)

 だが、インターネットの今後を考えると、今まで同様に利用者が順調に増加するのは難しいという。インターネットの拡大普及期はすでに過ぎており、今後は利用者の増加スピードが減速すると見込む。しかし井上氏は「インターネットの成長はまだまだ終わりじゃない」と成長の可能性を語る。ヤフーでは今後、利用者の増加だけでなく、利用時間についても増加させていくことを目指す。

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