米控訴裁、インターネット傍受規定を支持

文:Declan McCullagh(CNET News.com) 翻訳校正:河部恭紀(編集部)2006年06月12日 19時21分

 米連邦控訴裁判所は米国時間6月9日、Bush政権がインターネットサービスプロバイダー(ISP)への義務付けを計画している広範な通信傍受規定を支持する判決を下した。同規定は米国内で論議を呼んでいるが、今回の判決はBush政権にとっては強力な追い風となりそうだ。

 ワシントンDCの控訴裁判所で開かれた3人の判事からなる法廷において、連邦通信委員会(FCC)が2005年秋に同インターネット監視規定を可決したのは「合理的な政策選択だった」とし、同規定の撤廃要求が棄却された。

 FCCの委員長で共和党員のKevin Martin氏は今回の判決(PDFファイル)について、「これで捜査当局は、新しい通信技術についても裁判所の命令による合法的な電子的監視活動が行える」として称賛した。

 しかしHarry Edwards判事だけは、同規定に異議を唱えている。Edwards判事は5月に同控訴裁で口頭弁論が行われた際も、FCCの主張に対し「全く意味不明」で「ナンセンス」だと非難した。同判事は、1994年に制定された通信傍受法である「捜査当局による通信傍受の援助法(Communications Assistance for Law Enforcement Act:CALEA)」はFCCに対し、「恐らく法執行の支援に利用されるであろう、全ての通信サービスを規制する無制限の権限」を与えてはいない、と指摘した。

 しかし、今回提訴した企業や団体は、米議会には、ブロードバンドプロバイダー(および、企業や大学のプライベートネットワーク)に、警察にとって(捜査を行う上で)便利な中央監視ハブの設置を義務付けるつもりは全くなかったと、主張している。今回、原告となっている企業や団体のリストには、Sun Microsystems、Pulver.com、米コミュニティカレッジ協会(American Association of Community Colleges:AACC)、全米大学協会(Association of American Universities:AAU)、米国図書館協会(American Library Association:ALA)などの名前が並んでいる。

 仮に2007年5月に発効が予定されるFCCの通信傍受規定がなくても、警察にはインターネット上で通信傍受を行う法的権限がある。FBIのCarnivoreシステムはまさにその目的で開発されたものだ。それでもFBIは、「今日、国家安全保障上の脅威が高まっていること、さらに、犯罪者らが極めて秘密性の高い通信手段を用いる傾向が強まっていることを考えると、ブロードバンド上の通信を傍受できる標準化された権限が早急に必要だ」と主張する。

 CNET News.comが最初に報じた通り、バージニア州にあるFBIのElectronic Surveillance Technology Section(ESTS)の関係者が2003年中頃から、ブロードバンドプロバイダーに対し、より効率的かつ標準化された監視施設の提供を義務付けるよう、FCCに静かに圧力をかけ始めた。

 FCCの中にはFBIに同情的な委員が現れ、それらの委員は5対0で可決された2004年8月の予備投票をはじめ、通信傍受のための裏口の設置を義務付けるための一連の票決で賛成票を投じた。仮にFCCが何もしなかったとしても、警察によるインターネットの傍受は可能だが、実行により多くの手間と時間を要していただろう。

 FCCの一連の決定では、VoIPサービス企業も含まれている。警察はさらに、CALEAを修正してインスタントメッセージングや「管理」されていないVoIPプログラム(例えばSkypeの初期版や、公衆電話網(PTN)を利用しないPulver.comの「Free World Dialup」などのPtoPプログラム)なども対象に含めるよう要求したが、FCCは拒否した。

 2005年9月に同通信傍受規定に賛成票を投じた4人のFCC委員のうちの2人は、連邦政府の法的根拠は曖昧であると認めた。しかし民主党のMichael Copps委員は当時、裁判の結果、同規定が撤廃されれば、プラス面よりマイナス面の方が大きいだろう、と警告した。同氏は、FCCの論理が基礎としている法的根拠は「極めて複雑で分かりにくい」と指摘した。

 現在Bush政権は、国家安全保障局(NSA)が監督する電話とインターネットを対象とした監視プログラムをめぐり、次第に強まりつつある議会からの圧力、とりわけArlen Specter上院議員(共和党、ペンシルベニア州選出)の圧力にさらされている。9日の判決はそのような状況下で下された。またAT&Tはサンフランシスコで開かれている別の裁判で、連邦プライバシー法に反する方法で協力した罪に問われている。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。 海外CNET Networksの記事へ

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