野村総合研究所(NRI)は5月18日、2010年度までのウェブ技術の進展を予測した「ITロードマップ」を発表した。
発表によれば、Web 2.0というインターネットの新たなトレンドや、企業の基幹システムにおけるサービス指向アーキテクチャ(Service Oriented Architecture:SOA)の普及を背景として、ウェブ技術のなかでも、豊かな表現力や高い操作性を備えているFlashやAjaxなどの「リッチクライアント」の重要性が高まるとしている。リッチクライアントは、2009年度ごろには一般的な技術として普及し、Web 2.0やSOAへの適用拡大が予測されるという。
Web 2.0の特徴を表す考え方の1つに、ブログやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)など、インターネットの利用者自らが情報を作り公開することを意味するCGM(Consumer Generated Media)があるが、これに関連して、利用者自らがユーザーインターフェース(UI)を作り、公開することを、NRIでは、CGUI(Consumer Generated User Interface)と呼んでいる。
CGUIは、サービスの供給側が、自社サイトのサービスを別のウェブサイトでも利用できるようにするAPIというインターフェースを公開していることが必要だ。たとえば、Yahoo!やGoogle、Amazonなどの企業が自社サービスのAPIを公開したことにともない、Yahoo! WidgetやGoogle Sidebarといったリッチクライアント技術を利用したCGUIが利用者によって生み出され続けている。CGUIは現在、萌芽期を迎えているが、APIを公開する企業が順調に増えていけば、2009年度には普及すると予測されるとしている。
一方、SOAは、これまで一体だったアプリケーションを「サービス」という単位に分解し、それらの組み合わせによりアプリケーションを構築するアーキテクチャだ。
これまでの企業情報システムでは、各々の業務に対するシステムの処理手順やルールの取り決め(ビジネスロジック)とUIは一体となって開発されてきたため、受発注やCRMなどの業務アプリケーションごとにUIは異なり、ユーザーエクスペリエンス(ユーザー側の使い勝手)もアプリケーションごとに異なっていた。
SOAのもとでは、ビジネスロジックとUIも分離されることになり、リッチクライアントを活用して、UIは特定のアプリケーションに依存することなく統一され、使い勝手を向上させることが可能になる。
ところが、現在のリッチクライアント製品では、ビジネスに即応するためにサーバ側のビジネスプロセスやビジネスルールを変更しても、それらに連動して動作を柔軟に変更する機能がないため、SOAが掲げるビジネスへの高い即応性とリッチな(豊かな表現力と高い操作性を併せ持つ)UIを両立させるには、今のリッチクライアント製品の機能では不十分だという。
しかし、2006年度後半には、ビジネスプロセスやビジネスルールをクライアント側でも実行できるリッチクライアント製品が市場に投入されると予測している。さらに2008年度には、SOAに対応したサーバソフトと連動し、サーバ側の変更に対してリアルタイムに連動する製品の登場が期待されるとしている。
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