米国時間5月8日、ファイル交換企業のBitTorrentが、Warner Bros. Entertainmentの映画やテレビ番組をインターネット上で配信する事業に乗り出すことが明らかになった。このニュースについて、業界関係者は、PtoP技術が堅気の社会への参加に向け、新たな一歩を踏み出したと評価している。
BitTorrentのファイル交換システムは、米国の映画業界では長らく、強力かつ悪質な海賊用ツールキットと考えられていたが、両社が9日に発表したところによると、Warner Bros.が2006年夏から、同システムを使って映画やテレビ番組を配信することになったという。
エンターテインメント業界は以前から、ファイル交換サービスによって映画製作会社の著作権を侵害する行為や、音楽や映画に対する海賊行為が可能になるのではないかとの懸念を抱いていた。そのため、映画製作会社は積極的にPtoP企業を提訴してきた。
しかし、今やエンターテインメント企業の幹部らは、ファイル交換企業と手を組みたいと考えているようだ。市場調査会社Yankee GroupのリサーチアナリストNitin Gupta氏は、その1つの理由として、映画製作会社がインターネット上で大容量のビデオファイルを安価かつ高速で転送する手段を必要としているためだと指摘する。そして、それを可能にするのがPtoP技術というわけだ。またGupta氏はさらに別の理由として、合法的PtoPサービス業界はまだ初期段階であるものの、映画業界は、それらのサービスを利用し、ビデオを合法的かつ安価にダウンロードできる手段を一般ユーザーに提供することにより、コンテンツに対して海賊行為を行う必要性を除去できると考えているのではないか、と分析する。
Gupta氏は、「音楽業界の場合は、海賊行為の対策に乗り出すまでの期間が長すぎた」と述べた上で、「(映画業界は)合法的なオンライン配信システムに対する世間の関心を高めるために今出来ることをすれば、(海賊行為)問題に打ち勝つことができる」と語った。
両社の合意については、BitTorrentと競合する企業でさえも、万人の利益になる提携だと評価している。
「PtoP技術が新たな市場を見出すことは業界にとってプラスと考える」と語るのは、大手PtoP配信サービス企業Kontikiの創設者であるMike Homer氏だ。「(BitTorrentとWarner Bros.の合意は)業界にとって良い宣伝になる。今回の合意は、メディア製作者らのPtoP技術に対する信頼が高まっている証拠だ。」(同氏)
しかしその一方で、Homer氏やその他のPtoP業界関係者らは映画業界に対し、まだ試されていないファイル交換システムの導入を急速に進めるべきではないと警告する。BitTorrentはネット上で配信されるビデオを保護できるのか、また、映画製作会社の幹部らが希望する一種の配給統制は可能なのか、さらに、主流のインターネットユーザーたちの興味を引くことができるのかなど、同システムには未知数な部分が多い。
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