米国「Esquire」誌のライターA.J. Jacobsは、配布/編集が自由なオンライン百科事典「Wikipedia」について記事を書こうと思い立ち、画期的なアプローチを取ることにした。Wikipediaに関する低俗で間違いだらけの記事草稿を同サイトに投稿する、それがJacobsの試みた手段だった。
Wikipediaでは、だれもが百科事典の記事を新たに執筆し、既存の項目を編集することが可能である。この取り組みは2001年から続けられており、現在では英語版だけで74万9000件におよぶ記事を掲載するに至っている。各記事はこれまで、執筆コミュニティの多くのメンバーによって、何度も何度も編集の手が加えられてきた(Wikipediaは英語版のほか、109の言語のバージョンが存在している)。
あらゆる記事を好きにいじってもよいわけだが、Wikipediaコミュニティは記事の精度に常に目を光らせており、個々の投稿に潜んでいる誤りは、ほとんどの場合すぐに修正される。各コンテンツはこうした自浄機能を備えている。
この論理は、プログラマがオープンソースソフトウェアに関して説くのと同じものだ。すなわち、オープンソースソフトウェアではソースコードを自由に閲覧できるので、開発コミュニティは力を合わせ、単一の企業に雇われた数人の開発者より迅速にソフトウェアのバグを取り除くことができるということだ。
こうした仕組みを念頭に置いて、Jacobsは故意に誤りやミスタイプを含ませたWikipediaについての記事を執筆し、同サイトに投稿した。願わくは、Wikipediaコミュニティにこうした誤りを訂正し、適切な記事を作成してもらい、Esquireの12月号に掲載しようというのである。元の原稿は、後の参考のために保存しておいたという。
「わたしが記事の草稿を書いて、Wikipediaの創立者であるJimmy Walesがサイトにアップし、Wikipediaコミュニティに書き直しと編集をしてもらうというのがわたしのプランで、Walesもこれには大いに乗り気になった」と、Jacobsは実験の概要説明で述べている。Esquireでは、「記事の『投稿前バージョン』と『投稿後バージョン』を掲載することにした。記事を正しいものにするためのチャンスは、万人に開かれている。どんな訂正でも歓迎だ」(Jacobs)
JacobsおよびEsquireは、この件に関してコメントはしない意向だという。
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