地図サービスのビジネスモデルが変化
ここにきて、Googleが提供する地図検索サービス「Google マップ」のAPIである「Google Maps API」(関連記事)を利用したサービスが、日本でも相次いでリリースされている。
いち早く、このAPIを自社サービスに組み入れて7月7日に「はてなマップ」(ベータ版)を開始したのがはてなだ。はてなマップは、衛星写真地図上にブログサービス「はてなダイアリー」のキーワードや、ウェブアルバムサービス「はてなフォトライフ」の画像を登録したり、閲覧したりできる。
ユーザーは、地図上の任意の場所にはてなフォトライフに登録しているGPS位置情報が含まれた画像を登録する。また、はてなダイアリーのキーワードページには、地図情報へのリンクが加わり、キーワードの編集画面の地図欄にある「はてなマップ」からウインドウを開き、キーワードの場所を指定すると、キーワード編集画面に緯度と経度が入力されて、地図へ登録される。キーワードから地図を検索することも可能だ。
はてな取締役の伊藤直也氏は、はてなマップについて「最初は一発ネタとしてとりあえず始めました(笑)。嘘です。実は地図サービスを以前からやりたいと考えていたのですが、事業者から地図データの提供を受けようとするとライセンス料金が高額なうえ、非常に使い勝手が悪いので手が出せなかったのです。これを一気に解決したのがGoogle Maps APIで、飛びつきました」と説明した。
Google Maps APIは、1日あたりリクエスト数で5万回までという制限はあるものの、無償で提供されるのでビジネス的にも組み込みやすく、そのうえ扱いやすいので“技術者ごころ”がくすぐられるといったところだろう。この点が、Google Maps APIを使った地図サービスが相次いでいる背景ともいえよう。
伊藤氏は「はてなでは、地図単体でのサービスは手がけずに、あくまでもほかのはてなのサービスとうまく結びつけていく方針です。そのアイデアはたくさんあるので期待してください」と付け加えた。
Googleに地図データを提供しているのは、ゼンリンの子会社で地図情報サービスを手がけるゼンリンデータコムだ。楽天の「インフォシーク地図」やリクルートの「ホットペッパードットジェイピー」と同様にASPサービスとして、Googleとも地図データ提供に関するライセンス契約を結び、一定額のライセンス収入を得ている。
これまで、自社のオンラインサービスに地図を導入しようとすると、このように地図情報を有する企業と契約して料金を支払うしかなかった。しかし、Google Maps APIは無償で提供されているのでいまのところ原則として料金がかからない。Google Maps APIを使う企業がどんどん増えれば、地図データを供給する企業は困らないのか。ゼンリンに限れば自分で自分の首を絞めるような状況にはないのか。
ゼンリンでは「今後ビジネスモデルが変化していく可能性はあります」としながらも、「重要なのはユーザーのニーズに合わせ、地図にどんな付加価値を乗せてサービスするかという点だと思います。Google Maps APIではたしかに使いやすいエディターが提供されていると思いますが、Googleマップはピンポイントで場所を特定するような使い方には不向きだと考えます。そのため、無償だからといってすべてGoogle Maps APIを利用した地図サービスばかりになることはないでしょう。自分で首を絞めてはいません」と見ている。
そして、Googleマップが日本で提供されるようになっても、「ゼンリンデータコムが無償で提供しているオンライン地図検索サービス『its-mo Guide』のアクセス数が減少するといった影響は見られません」と言う。
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