東京大学など日本の主要6大学は、講義のシラバス(講義概要)や講義ノートといった講義情報をウェブサイトを通じて無償で公開した。これはマサチューセッツ工科大学(MIT)が2002年9月から開始しているOpenCourseWare(OCW)という規格に準拠したもので、MITではすでに1100もの講義で使われる教材や講義内容を公開している。
講義情報を公開したのは、大阪大学、京都大学、慶応義塾大学、東京工業大学、東京大学、早稲田大学で、これら6大学は日本OCW連絡会を組織し、MITとの連携を強化して成果を公開していく予定だという。連絡会の事務局は慶應義塾大学に置かれる。
OCWはいわば大学の講義教材のオープンソース化である。誰もが有名大学で使われている教材を目にすることができ、その教材を使用できる。ただし、非営利でかつ教育目的に限って、という条件はつく。たとえば、MITの場合では、OCWとして公開した教材(もちろん英語のもの)が、第三者の手によって他の言語に翻訳されて活用されているケースもある。教材の質が十分でない発展途上国などで使用されているケースもあるという。
講義情報の公開は何も学生や自学する人だけにメリットがあるわけではないようだ。東京工業大学の相澤益男学長は、「OCWが大学教員の意識の革新につながる」と指摘する。世界に教育内容を公開しているために、教員も刺激を受けながら講義内容を革新していかなければいけないというわけだ。MITでは、互いに知り合いではなかった教員同士が、OCWでの公開をきっかけにコラボレーションを始めたという実例もあるそうだ。
東京大学では、OCWの公開と同時にMIMA Searchという複数ある講義の関連性を視覚化して表示するツールを提供している。これは学生などが専門的になりすぎている教育を体系だってとらえるのに役立つという。東京大学の小宮山宏総長は、「ゆくゆくは世界の大学の講義の情報も調べられるようにし、講義の正しい単位互換にも使えるようにしたい」と語っている。
公開から2年以上経つMITのOCWのサイトには、1100の講義情報があり1日に2万ものユーザーが訪れるという。対して6大学が公開している講義情報の数は130程度となっている。
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