AOL Time Warner(現在のTime Warner)の元会長であるSteve Caseは、恐らく企業の歴史の中で最大の失敗といえるAmerica OnlineとTime Warnerとの合併に対する非難を甘受することを全く恥じてはいない。
両社の合併が発表されたのは、ちょうど5年前の今頃の時期だった。白髪交じりのCaseは、Computer History Museumで行われたイベントで、合併を促した要因や合併が失敗に終わった理由とされている点について、自身の率直な見解を述べた。非難の対象となるのは、株価下落によって、時価数十億ドルが消失したこと、できる以上のことを約束し続けた経営陣の非妥協的な姿勢、あるいは、不適切な時期に不適切な行動を取ったことであろう。
しかしCaseは、最初に非難されるべきは自分自身であると考えている。
Caseは同イベントで、「今にして思えば、恐らく私は、9万人もの従業員を抱える企業の会長としてふさわしい人間ではなかった」と述べ、さらに「考えてみれば、われわれの中に(会長に)ふさわしい人間などいなかった」と語った。
実際、合併を立案したCaseと当時Time Warnerの最高経営責任者(CEO)だったGerald Levinの二人にとって、インターネットを武器にビジネスを展開する巨大なメディア企業という崇高なビジョンは、縄張り争いと冷酷無比の権力闘争という味気ない現実の中に消えていった。Caseは、Time Warnerの悪名高い閉鎖的な企業文化をつらい体験の中で身を持って実感した。数十億ドル規模を誇るTime Warnerの経営陣がAOLの新しい経営陣と連携するという発想に苛立ちをみせたのだ。
Caseは、合併のビジョンが失敗に終わった原因は「時期と実行」における失敗にあると付け加えた。株式市場が崩壊し始めた2000年に、その波及効果は2001年末までAOL Time Warnerには及ばなかった。財務見通しの見苦しい撤回と株価の暴落後、Levinは退職を迫られ、最高業務責任者(COO)のBob Pittmanは追放され、Caseも2003年1月に会長職を辞任した。
Caseは「企業文化や株価の下落など、いくつかの理由で人々は腹を立てた」と述べ、さらに「合併は私が提案した。誰かに怒りをぶつけたかったのなら、私がその対象だった」と語った。
しかし、合併を選んだCaseの考えは理にかなっていた。当時のAOLのケーブル部門はTime Warnerを必要としていたのだ。
合併契約が締結された2000年当時、AOLは誰もが認めるダイヤルアップインターネットアクセスの最大手企業だったが、ブロードバンドによってもたらされる、より大きな脅威の足音が遠方から忍び寄っていた。当時は主に、ケーブル企業や地元の大手電話会社が高速インターネットアクセスサービスを提供していたため、AOLなどのような企業は、自社のインターネットアクセス事業の採算性を維持しつつ、顧客をブロードバンドサービスに移行させるのは不可能だった。
2005年の現在、AOLのダイヤルアップサービスの顧客は2002年から400万人近くも減少した。その大半は、ケーブル/電話会社が提供するブロードバンドサービスに乗り換えた。そこで、Time Warner Cableは、AOLを売り込むのではなく、自社のISPであるRoad Runnerに固執する道を選んだ。
「(Time Warnerは)ブロードバンドに移行するために、AOLに対し、過去に例を見ないほど膨大な資産をつぎこんだことになる」(Case)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス