ソニーBMGは、一部のCDに採用したコピー防止用ソフトウェアが原因で大きな批判を浴びており、一部では同社に対する訴訟も起こされているが、それでもいわゆる「rootkit」をめぐる論争は今のところ同社の売上に影響を与えていないと、ある市場調査会社が述べている。
ただし、ソニーBMGに対する圧力が強まっていることは確かだ。テキサス州検事総長のGreg Abbottは米国時間21日、ソニーBMGがコンピュータのハードディスク内に身を潜めるrootkitソフトウェアを密かにインストールするアルバムをリリースしたことは、同州の新しいスパイウェア対策法に違反するとして同社を提訴した。rootkitはPCをウイルスなどの悪質なコードに対して無防備にしてしまう。
Abbottは声明のなかで、「ソニーBMGは、秘密のファイルをコンピュータに潜ませることで、消費者に対するハイテク版のスパイ活動に従事した。同社のCDを購入した消費者は楽曲を買ったつもりだったが、彼らが受け取ったのは、コンピュータに害を及ぼし、マシンをウイルスの危険にさらし、消費者を身元詐称犯罪の危険にさらす可能性のあるスパイウェアだった」と述べている。
Abbottの対応は、この問題に対する一連の抗議の最新例となる。これに関しては、ネット上や各方面でこれまでに一連の抗議活動が展開されてきており、その結果ソニーBMGは470万枚以上という前代未聞のリコールと、210万枚の販売済み商品の交換を余儀なくされた。
しかし、批判や不買運動の呼びかけが3週間も続く一方で、消費者らは今も以前のようにソニーBMG製CDを購入し、利用しているようだ。
市場調査会社Nielsen SoundScanがまとめたデータによると、コピー防止用ソフトウェアが搭載されたソニーBMG製CDの売上は、ほとんどもしくはまったく減少していない--少なくとも同社が先週リコールに踏み切る前まではそうだったという。
Nielsen SoundScanのデータによると、この問題の影響を真っ先に受け、その範囲が最も広かったのは、サザンロックのアーチストVan Zantの「Get Right with the Man」だったが、実際にはCDのセキュリティリスクが明らかになったあとの2週間は売上が伸びたという。また、Celine Dionのアルバム「On Ne Change Pas」の売上は、今回の論争が巻き起こってからも1週間あたり300枚と堅調に推移している。
発売から比較的日の浅かったTrey AnastasioやChayanneなどのアルバムのほうが、同期間中に大きな落ち込みを見せた。だが業界関係者によると、アルバムのリリースから間もない場合、週間単位での売上の落ち込みは珍しくないという。
アルバムの人気を測るもう1つの基準がGracenoteの提供するサービスだ。同社が提供するCDDB(Compact Disc Database)サービスは、iTunesやWindows Media Player、RealPlayerといったメディアプレイヤーを使って、コンピュータでCDが再生された回数を計測している。これらのプログラムは、アルバム名と曲名を自動的に参照するようになっている。
Gracenoteの関係者によると、同社のデータからは、数値の傾向に目に見えるほどの変化はなく、またVan Zantのアルバムと、同様の売上を記録したrootkit未搭載アルバムとの間に大きな差はないという。ソニーBMGがリコールしたほかの複数のタイトルについても同じことが言えると同社は指摘している。
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