スタンフォード大学の卒業生であるDavid Sellingerは、10月に同大学のキャンパスで開かれた同窓会に出席したが、何かと忙しく、尊敬する歴史の教授の講義には顔を出せなかった。
しかし、同大学が先ごろ試験的に立ち上げた「Stanford on iTunes」プログラムのおかげで、Sellingerは教授の話の大部分を聞き逃さずに済んだという。
10月後半に始まったStanford on iTunesは、大学が講義やインタビュー、学位授与式のスピーチなどを、「iTunes Music Store」のようなシステムを通じて一般に公開する初の試みだ。
「最高に気に入った」と、Sellingerは大学の卒業生担当部署に電子メールを送った。「先週末のレクチャーはどれも参加できなかったが、Stanford on iTunesのおかげで、どこにいてもスタンフォードの精神を感じ取ることができる。これはいままでで最高に優れたものの1つだ。(歴史学者の)David Kennedyの声を再び耳にしたときは、学生だった頃の思いが甦り、学び続けたいとさえ思った」(Sellinger)
iTunes Music Storeのなかに設けられた同大学のコーナーには、当初400種類ほどのオーディオプログラムがダウンロードできるようになっていた。スタンフォードの卒業生担当官David Vargasによると、提供するコンテンツの数は今後爆発的に増え、ビデオコンテンツも間もなくそのなかに含まれることになるという。
Stanford on iTunesのコンテンツは、だれでも無料で利用できる。興味深いのは、これが喜ばしい偶然の一致に過ぎないという点だ。Vargasによれば、スタンフォード大学は、151カ国に18万人存在している同校の卒業生にさまざまなコンテンツを配布するための簡単で安価な方法として、Stanford on iTunesを利用しているに過ぎないという。
「(われわれが直面している)大きな課題の1つは、卒業生に大学との学問的なつながりをいかに維持してもらうかということだ」(Vargas)
広く利用されているiTunesは、こうした目的にぴったりのツールだった。
Vargasは、「大学は知的コンテンツの宝庫である。これを卒業生に提供できれば、非常に効果が大きい」と話す。もっとも、同大学が卒業生にコンテンツを配信することで、一般の人々もメリットを得ていることをVargasは認めている。
iTunesを利用して講義の内容などを一般公開したのはスタンフォードが初めてだが、ほかにもいくつかの大学が、Appleの技術を使って学生や教授陣にコンテンツを提供してきている。
デューク大学は2004年秋に、オリエンテーションの資料を収めたiPod1600台を新入生に配り、こうした動きの先鞭をつけた。現在同大学では学校全体でiPodを授業に取り入れ、授業の資料を保存して、いつでも、どこでも活用できるようにする計画を進めている。
そのほか、ブラウン大学やミシガン大学歯学部、そしてスタンフォード大学などでは、Appleと提携し、iTunesを使って学生に授業の模様を配信する試みを進めている。
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