米フィラデルフィア市は、135平方マイル(約350平方km)にわたるWi-Fiネットワークの構築事業の委託先にEarthLinkを指名した。これにより、米国最大規模となる市の無線ネットアクセス提供事業が正式に開始される。
フィラデルフィアの最高情報責任者(CIO)、Dianah Neffが米国時間4日に明らかにしたところによると、アトランタに拠点を置くISPのEarthLinkは、競合案を出していたHewlett-Packardを退け、見事、同市内の電柱にWi-Fiアクセスポイントを設置する契約を勝ち取ったという。大半の市民にとって、無線アクセスサービスの利用料は、月額20ドルになる。
「EarthLinkは、無線ネットワーク構築のための資金提供、およびネットワークの構築/運営を行なう。またわれわれは、各家庭にコンピュータを導入して使い方の訓練を行ない、地域住民と連携して市の経済発展を目指すという公益目標を掲げている。EarthLinkはその目標を支援するため、われわれが設立した非営利団体Wireless Philadelphiaに売上の一部を提供する」とNeffは語った。
ローカル無線ネットワークを構築した米国の自治体は他にも存在するが、フィラデルフィアは、これまでにそのようなプロジェクトを正式に決定した都市の中では最大の都市だ。加入料のうち市の取り分は何%かなど、未定の部分もあるが、向こう2カ月以内にそれらについての交渉が行なわれる予定で、交渉がまとまり次第、最終的な契約が締結され、ネットワークの構築が開始される予定。(サンフランシスコ市長のGavin Newsomは3日、同市内全域にわたる無線ネットワークの構築に関する詳細な計画を発表した。)
フィラデルフィアの計画は、全面的な政治的賛同を得られたわけではない。地元の電話事業者のVerizon Communicationsやケーブル事業者のComcastから批判を浴び、さらに市議会議員からも、行政上の「無用な仕事」が増えるだけだとの批判の声が上がった。
フィラデルフィア市の計画に対する反発は、市営無線ネットワークの制限を目的とした州法という形で現れ、さらに、州や地方自治体によるインターネット、通信、ケーブル接続といったサービスの提供は、仮に民間企業が「実質的に同様のサービス」を提供している場合には、事実上禁止されるという内容の連邦法案まで提出された。
フィラデルフィアの計画と他の自治体の計画には決定的な違いがある。フィラデルフィアの計画では、EarthLinkがハードウェアを所有し、サービスの提供に関する財政上のリスクも同社が負担する。そのため、たとえ事業が失敗に終わっても市の納税者が損失を被ることはない。
Neffによると、EarthLinkはWi-Fiサービスの基幹ネットワークとなるものを運営するが、多数のISPがアクセスサービスの販売を許可されるという。同氏は「新たな独占企業を作り出すつもりはない」と述べた。「電気通信やケーブルの分野では独占企業が存在している」(Neff)
EarthLinkのカスタマーサポート担当エグゼクティブバイスプレジデント、Donald Berrymanは、「当初われわれは、15平方マイル(約39平方km)のPOC(proof-of-concept:概念実証)用エリアを建設し、試験段階が終了次第、Wireless PhiladelphiaとEarthLinkは市の無線ネットワークの残りの部分の建設を開始する」と語った。
低所得層向けの低価格アクセスサービスの利用料金はおよそ10ドルの見込み。フィラデルフィア市の警察官や建築物検査官などの公務員は、これまで無線ネットワークサービスとして、一般的な月額利用料金が70ドルのVerizonのEV-DOサービスを利用してきた。同市は今回の計画で、それらの公務員がより低価格な無線ネットワークサービスを利用できるようにすることにより、年間およそ200万ドルの経費削減を実現したい考えだ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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