Hewlett-Packard(HP)は、来年はじめから新しい家庭用PCとノートPCにNetscapeのウェブブラウザを搭載して出荷する計画を進めている。
Time Warner傘下のAmerica Onlineに属するNetscapeによると、米国時間3日に発表されたこの契約は、1990年代にブラウザ戦争が終結して以来、初の主要PCメーカーとの配布契約になるという。契約条件は明らかにされていない。同社は5月、オンライン詐欺行為からユーザーを守る機能を搭載した「Netscape 8」をリリースしている。
MicrosoftのInternet Explorer(IE)は最も普及しているブラウザだが、その市場シェアを規模の小さいベンダーが徐々に侵食し始めている。Mozillaのオープンソースブラウザ「Firefox」には熱心な支持者がいる。Opera Softwareも健在で、9月20日には同ブラウザの無償バージョンから広告を削除することを発表している。
Netscapeの関係者は3日、今回のHPとの契約により、同社製PCのユーザーはコンピュータのセットアップ時にNetscapeをデフォルトのブラウザとして選べるようになる、と述べた。同ブラウザはHPおよびCompaqの両ウェブサイトにリンクするようカスタマイズされ、アイコンはWindowsの「スタート」メニューに表示される。
かつては広く普及していたNetscapeブラウザも、Microsoftが1990年代半ばにIEを投入すると、大きくシェアを落とし始めた。MicrosoftのライバルだったAOLによるNetscape買収も、独禁法訴訟の長期化も、同ブラウザの運命を変えることはなかった。
しかし2004年、IEのセキュリティ面の脆弱性が注目を集め、また新機能の搭載が遅れたことで、Microsoftのライバル各社にシェア拡大のチャンスが訪れた。NetscapeとMozillaは、セキュリティをそれぞれのブラウザの最大のセールスポイントとして大々的に売り込んだ。Microsoftは、IEを2006年にアップデートする予定を明らかにし、これに対抗した。
Netscape 8には、フィッシングやスパイウェアなどのネットの脅威からユーザーを守る機能が搭載されている。同ブラウザは、悪質/良質サイトの一覧を参考にしてブラウジング中にセキュリティ設定を自動的に調整する。フィッシングとは通常、スパムメールと不正サイトを組み合わせることで、ユーザー名やパスワード、クレジットカード番号といった機密性の高い情報をユーザーからだまし取る行為を指す。
Netscape 8はFirefoxがベースになっているが、FirefoxとIEの両方のブラウザエンジンを切り替えて利用することが可能。多くのウェブサイトがIEで動作するよう構築されているため、FirefoxとIEの両エンジンをサポートすれば互換性を最大限まで高められる。
HPのNick Laboskyは電子メールによる声明のなかで、「具体的にNetscapeブラウザを選んだのは、多数のセキュリティ機能を搭載する点で優位であったのと、Triton(IE)とGecko(Firefox)の両レンダリングエンジンが使えるためだ」と述べている。
HPは米国とカナダでNetscapeを出荷する。Laboskyによると、その他の国についてはブラウザ計画の評価を進めているところだという。
Microsoftのブラウザは依然として市場を支配している。米国市場における9月時点のシェアは、IEが86.87%、Firefoxが7.55%、そしてNetscapeが2.16%だったとの分析結果が、Net Applicationsから出されている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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