昔の生物の教科書が必要になったのに、大学で使用していたぼろぼろのテキストが見つからない場合、次のような行動をとることが考えられる。
まず、大学の書店へ足を運んで、古本を1冊もらってくることが考えられる。あるいは、Amazon.comに数ドル支払って、新しいものを購入するのはどうだろうか。同窓生に連絡して、昔の教科書を貸してもらう手もある。
もっとも、Wikimedia FoundationのJimmy Walesやその同僚にこうした相談を持ちかけたら、ほかにも手はあると教えてくれるだろう。そう、「Wikibooks」プロジェクトを利用すればよいと。Walesらが進めるWikibooksプロジェクトは、オープンソース開発モデルに基づいて、幼稚園から大学までの教育課程で使用する教科書を包括的にまとめ、無料利用および自由配布できるようにするものだ。
Wikibooksは「Wikipedia」プロジェクトと同様の形式で構築されるが、まだその活動は始まったばかりである。Wikipediaはあらゆる人々が項目を作成し編集できるオープンソースの百科事典で、現在では英語版だけでも74万7000件近くの記事が掲載されている。
Wikibooksのようなデジタルモデルでは、各記事の文字数を必要に応じて調整でき、加筆修正や参照、編集も容易なので、教科書の発行を一手に牛耳ってきた出版業界に戦いを挑むことが十分可能だと、Walesらは考えている。
「Wikibooksプロジェクトの目的は、『自由利用』の一語に尽きる。つまり、さまざまな言語を操る世界のさまざまな人々が利用でき、どんな用途であっても複製/再配布/修正が可能なカリキュラムを無料で実現するということだ」(Wales)
Walesはまた、出版業界は「市場が根本的に変化していることを認識すべきだ」と話している。「今後も変わらず利益を上げる出版社もあれば、時勢を把握し付加価値を追求していく出版社もあるだろう。現実を直視できず、消滅していく出版社も出てくるにちがいない」(Wales)
世界中の著述家や編集者がWikibooksを利用できるようになれば、このプロジェクトには何万冊もの書籍が集められ、幅広いトピックを深く掘り下げた記事が満載されることになる。さらにWikibooksの利用読者は、独自の本を作り上げたり、既存の記事に思い思いの編集を加えることができるのである。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス