米連邦第1巡回区控訴裁判所は11日(米国時間)、顧客宛てに送られたメールを盗み見したとされるメールプロバイダ-に対し、刑事責任を問うことは可能だとする判決を5対2で下した。
2004年に、3人で構成される判事団が2対1で同被告を無罪とする判決を下し、市民的自由の擁護者の間に不安を引き起こした。また、この判決を受け、米議会も通信傍受法の改正に向けた取り組みを開始した。しかし今回の控訴裁判決により、昨年下されたこの無罪判決は覆されることになった。
プライバシー擁護派はこれまで、2004年に第1巡回区控訴裁が下した判決をそのまま放置すれば、米政府による電子メールの盗み見を助長しかねないと警告していた。米司法省もめずらしくこの意見に賛同し、同訴訟を棄却すべきではないと強く主張した。これに対し、被告側の弁護団は、通信傍受法を広く解釈してしまうと、通常の業務運営を行なっているインターネットサービスプロバイダー(ISP)が提訴されかねないと主張していた。
この裁判の被告は、オンライン書店Interlocの前バイスプレジデントBradford Councilmanだ。現在Interlocは、Alibrisの傘下にある。
Interlocは一部の顧客(主に希少本/古本業者)に、末尾が「@interloc.com.」のメールアドレスを提供している。Councilmanは、Procmailスクリプトの作成を命じ、商売上の有益な情報を得るために、そのスクリプトを使ってAmazon.comから希少本/古本業者に送られたメールのコピーを保存したとされている(Procmailは、人気のUnixユーティリティで、受信メールの振り分け/転送に使用される)
この訴訟の核心部分は、そのようなメールをコピーする行為が、「電子通信」の傍受について規定されている連邦通信傍受法に定められた複雑な定義に違反しているか否かという点だ。同法の定義は、一時的にせよメール待ち行列内に保存されているメールは対象外と解し得るため、Councilmanの弁護団は、同氏の行為は通信傍受法に反しないと主張した。
しかし、8日に公表された第1巡回区控訴裁の多数意見は、同弁護団の意見とは異なっていた。Kermit Lipez判事の手になる意見書のなかで、多数派の判事らは、「(通信傍受)法には、議会が一時的に保存される通信を定義から除外する意向だったことを示す明確な指摘はない」としている。
「これは、オンラインプライバシーにとって重要な勝利だ」と、電子プライバシー情報センター(Electronic Privacy Information Center:EPIC)のディレクター、Marc Rotenbergは述べている。「今回の判決により、(一時的に保存されている場合を含む)インターネット通信の傍受に関する高度な基準が確立される」(Rotenberg)。EPICは同訴訟の中で、摘要書を提出している。
一方、少数派のJuan Torruella判事は、熱のこもった反対意見の中で、多数派の同僚判事の司法積極主義を批判した。「議会が『電子通信』の定義の中で使った(特定の)言葉によって、多数の判事が、私が不適切な裁判官立法だと考える行為に駆り立てられたのは、議会の失態だ」(Torruella)
さらにTorruellaは、「通信傍受法を解釈する上で、電子メールのプライバシー保護の完全な空洞化を議会が予期していたことを前提とする必要はない」と述べている。その代わりに、同判事を含む反対派の判事らは、プライバシーはメールプロバイダと顧客の間の単純契約によって保障されるとしている。
ただし、今後の展開は不透明だ。11日に、Good & Cormier法律事務所に所属するCouncilmanの弁護団にコメントを求めたが、回答は得られなかった。同弁護団の選択肢としては、最高裁判所に再審理を求めるか、あるいは、裁判が開かれた後に議論を再開するなどが考えられる。
Jay Inslee下院議員 (ワシントン州選出、民主党)は11日に出した声明の中で、今回の控訴裁判決を賞賛した。昨年の判決が覆されなければ、ISPは顧客のメールを今まで以上に自由に盗み見ることができ、また警察もほとんどプライバシー保護を遵守することなく、そのような通信の傍受が可能になる、とInsleeは述べている。昨年下された判決に対する対応策として、複数の法案が議会に提出されたが、Insleeもある法案を他の議員と共同で提出している。
ジョージワシントン大学の法学部教授、Orin Kerrも今回の訴訟で摘要書を作成した。同教授は、議会は今後も通信傍受法の改正に向け、改正案の一部を前向きに検討するのではないかと予想している。(Patrick Leahy上院議員(バーモント州選出、民主党)も今回の訴訟で、1通の「裁判所の友」意見書を共同で作成した)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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