カリフォルニア州フォスターシティー発--映画業界では、劇場公開や家庭向けのビデオ発売、テレビでの放映など、さまざま配信チャネルを使い分けるやり方が何年も前から定着しているが、音楽業界もこのようなやり方に将来を賭けようとしているようだ。
このところ、Apple ComputerのiTunesのようなデジタル音楽配信サービスがもっぱら注目を集めている。しかし、Sony BMG Music Entertainment幹部のThomas Hesseは米国時間9日、当地で開催された「Music 2.0」カンファレンスでの講演のなかで、特に携帯電話の利用者を考慮した場合、デジタル音楽市場はすでに多様な配信モデルへ移行している、と述べた。
Hesseによると、同社ではすでにモバイル端末向けのデジタル音楽販売が増加しており、売上高に占める割合は米国市場で10%、中国と韓国では20%を超えているという。さらに、来年には各レコード会社が、この数字を押し上げるために、さらに多くのやり方を試みてくるだろう。その結果、さまざまな販売チャネルを通じて、幅広い製品が、異なるタイミングで提供されるようになると見られている。
「オンライン配信では、段階的な価格設定が見られるようになる」とHesseは言う。「今後は、99セントのダウンロード販売しかない現状よりも、はるかに高度な販売方法が登場するだろう」(Hesse)
iTunes限定の楽曲を販売したり、新曲をまず着メロとして配信したり、あるいはアルバムの発売後だいぶ経過してからライブCDを(オンラインで)リリースするなど、音楽販売の新たな方法が登場してきているが、これは音楽業界がデジタル音楽配信ビジネスについに本腰を入れて取り組み始めたことを示している。
実際にCDの販売は落ち込み続けており、各社の幹部らもこれがすぐに回復したり、安定したりすることはないと考えている。また、PtoPの利用も相変わらず世界中で増加しており、調査会社のNPD Groupによると、2004年時点で消費者のハードディスクに保存されていた楽曲の44%は、ファイル交換もしくはCDの不正コピーによって入手したものだったという。
しかし、デジタルデータの売上も順調に伸び続けている。国際レコード産業連盟(IFPI)によると、2005年前半には約1億8000万曲がネットで販売されたという(昨年同期は5700万曲だった)
この売上急増を牽引しているのは一部の作品だ。Warner MusicのJeremy Weltによると、同レーベルのヒット作品のなかには、発売後第1〜2週めの売上のうち、オンライン販売による売上が10〜20%を占めるものもあるという。同氏はそうした例の1つとして、先ごろリリースされたテレビ番組「The OC」のサウンドトラックを挙げ、同アルバムの場合、オンラインでの売上が発売第1週の売上全体の18%に上ったと説明した。
映画業界はここ数年、最初は映画館、次にホームビデオ、そして最後にテレビというように、各チャネルごとの発売のタイミングを厳しく管理し、段階的にコンテンツをリリースするやり方で、非常に大きな利益を上げてきた。最近でこそ、DVDの発売されるタイミングが大幅に早まったために、各チャネルでコンテンツがリリースされるタイミングの差は縮まっているが、それでもは映画会社では映画館、ホームビデオ、そしてオンデマンドサービスのリリース日を厳密に区別している。
携帯電話、オンラインのサブスクリプションサービス、ダウンロードサイト、小売店、ストリーミング配信、ダウンロードビデオなど、製品やチャネルの数が急増するなかで、音楽ビジネスが映画業界のようなやり方を採用していくのは自然な流れだと、一部アナリストは話している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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