Googleは昨年12月、世界有数の規模を誇る大学図書館や公立図書館の蔵書をデジタル化し、マウスをクリックするだけで希少書物を利用できるようにする野心的な計画に着手し、一部で論争を巻き起こした。
一方、目立たないところで、数多くの大学がすでに本を置かないデジタル図書館の実現に取り組んでいる。この動きは、ハイテクに精通した現代の学生たちの情報への接し方に関する理解が深まっている現状を反映している。
「図書館が、たくさんの書物を集めた場所だと思われていたのは、ずっと昔のことだ」と、スタンフォード大学の図書館員で、同大学の学術情報リソース担当ディレクターを務めるMichael Kellerは語る。「図書館はいまや物理的場所であると同時に仮想の場所でもある」(Keller)
未来の図書館の実現に取り組んでいるのは、スタンフォード大だけではない。マサチューセッツ工科大学(MIT)、カリフォルニア大各校、ミシガン大学、バージニア大学などでも、蔵書のデジタル化や新技術の開発、永久保存可能な電子書籍のアーカイブ構築が進んでいる。
「現在はまさに転換期にあり、われわれの能力が問われている。われわれはデジタル情報へのアクセスを可能にする方法については若干の知識があるが、長期に渡って学術情報を保存する方法については大きな不安を抱いている」と、MIT図書館の技術担当アソシエートディレクター、MacKenzie Smithは述べている。
Kellerによると、スタンフォード大では、5年以内に工学部の図書館から実際の本をなくしたいと考えているという。これに関する計画の大半は、まだ詳細を煮詰めている段階にあるが、同図書館は、特にブックレス化に向いている点が従来の図書館とは異なる。これは、(工学を学ぶ)学生が情報の形よりも、それを見つけ出す方法について、より大きな関心を持っているからだ。たとえば、シェークスピアやヘミングウェイの著書などは棚に並べておく必要があるだろう。しかし、Unixカーネルの開発に関する専門書を棚に並べておく必要性はそれほど高くない。
この図書館には、実際の書籍の代わりに、グループ研究室、共同のワークスペース、コンピュータ端末などが設置されることになっている。コンピュータ端末では、インターネットの利用だけでなく、デジタル化された何百万もの業界紙、学術論文、学問研究結果、書籍の閲覧が可能になる。さらに、専門の図書館員が学生に経験則--すなわち情報を検索するための科学的方法を教えることになっている。
現在、複数の大学がGoogleと協力しているが、スタンフォード大もそのうちの1校で、最終的には計870万冊に及ぶ蔵書をデジタル化することになっている。また同大学は、検索技術企業のGroxisとも協力している。Groxisはデータやその関連事項を視覚的に表示するソフトウェアを開発している。スタンフォード大は、Groxisが開発した、350種類のいずれ数百種類のプラグインを学生が利用できるようにしたいと考えている。
スタンフォード大は、隣接するリバーモアの街に書籍の保管スペースを用意し、図書館の本棚に並べておく必要がなくなった書籍をそこに保存しておけるようにしている。
一方、東海岸では、MITがおよそ5年前から「D Space」と呼ばれるリポジトリを運営してきており、書籍、記事、論文、技術報告書、画像、シミュレーションなど、デジタル化されたありとあらゆる種類の資料をここに保存している。同大学は、印刷物やオンラインコンテンツの出版者とも連携し、予約購読制で最終的にウェブ上で公開されるデジタルコピーへの長期にわたるアクセス権を取得している。同大学はさらに、サンディエゴにスーパーコンピュータセンターを所有しており、そこに全てのデータを保存している。
その他の大学も、図書館内の蔵書の整理を行なっている。例えば、テキサス大学オースチン校は、同校の主要な図書館内にコンピュータルームを設置するため、そこに保存されていたおよそ9万冊の書籍を別の建物に移した。同校は今秋までに、主要図書館内にいわゆる「デジタル情報スペース」を設置し、学生らがどこでも簡単に本を検索できるようにする予定だ。
しかし、図書館のデジタル化に向けた最大の課題は、出版者や知的財産権保有者らが抱いている懸念だ。著作権法は長年の間に変化を遂げており、また米国以外の国々では著作権法の内容が異なる可能性もある。よって、書籍デジタル化計画の多くは、その実施にあたり、各作品の著作権の調査や権利者の許可の取得に多くの時間を費やさなくてはならない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向 けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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