米上院の委員会は米国時間26日、「サイバー犯罪」を標的とした世界初の条約を承認した。これにより、今年後半に予定される上院での投票に向けて、お膳立てが整ったことになる。
上院外交委員会(FRC)では、出席した9人の委員全員が発声投票により、欧州評議会(Council of Europe:CE)の「サイバー犯罪条約(Convention on Cybercrime)」に概ね賛成した。FRCによる同条約の承認は、米国の同条約の批准を熱望しているソフトウェア企業にとって、苦労して勝ち取った貴重な勝利となった。
しかし、米国法にはすでに同条約が義務付けている事項の大半が含まれているため、上院の承認はほとんど象徴的なものとなる。同条約は加盟国に対し、警察の必要に応じて、保存データの捜査押収、秘密裏に行なわれるインターネット盗聴、国境を越えた支援、インターネットプロバイダの記録の保存を認める法律を導入するよう義務付けている。
しかし、Chris Dodd上院議員(コネチカット州選出、民主党)は、27日に行なわれた短い議論の中で、市民的自由の擁護団体から注目に値するいくつかの問題が提起されている、と主張した。
「それらは決して誤った問題提起ではない」とDoddは述べ、さらに「私はその点を指摘した上で、それらの問題点を記録しておく」と付け加えた。
電子プライバシー情報センター(EPIC)はFRCに書簡を送付し、その中で、この条約が批准されれば、プライバシーや市民の自由を保護するための有効な措置が取られることなく、様々な侵害的捜査技術が作り出されかねないとして、同条約を批准すべきでないと訴えた。
一方、ソフトウェア企業側は、無理矢理にでも議会議員らを批准支持に傾かせようと、議会にロビイストらを送り込んだ。ソフトウェア業界団体Business Software Alliance(BSA)の公共政策担当バイスプレジデント、Robert Cresantiは投票後に、「われわれは、今年はじめからこの条約をかなり強力に推進してきた」と語った。
「これまで私が主張してきたのは、この条約が、ほとんどもしくは何の結果ももたらさないサイバー犯罪が行なわれている国境なき世界に正義を適用するものだということだ。」(Cresanti)
ソフトウェア企業がこの条約に大きな関心を示している理由の1つは、同条約で著作権関連の厳格な罰則が規定されていることにある。同条約は加盟国に対し、犯罪行為が故意に、商業規模で、コンピュータシステムを用いて行なわれた場合に、インターネット上の著作権侵害および(違法コピー防止技術の)迂回装置を取り締まる刑法の制定を義務付けている。インターネット上の著作権侵害や迂回装置を標的としている点で、その刑法は米国のデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に類似している。
同条約の別の条項は加盟国に対し、「違法な妨害」や「データ干渉」を含む多くのコンピュータ犯罪の実行を目的に設計されたあらゆる種類のハード/ソフトウェアをインターネット上で「利用可能」にする行為を禁止するよう義務付けている。同条項の下では、単にそのようなハード/ソフトウェアを所持しているだけでも犯罪とみなされる場合がある。
これまでに、ハンガリー、ルーマニア、クロアチアなどが同条約を批准している。Bush大統領は上院に対し、それらの国々にならって同条約を承認するよう求めた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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