TBSとツタヤがタッグ--番組のDVD強化後、ネット配信はイバラの道 - (page 2)

藤本京子(編集部)2005年07月20日 14時44分

流通はポニーキャニオンから新会社へ

 TBSテレビ専務取締役の城所賢一郎氏は、「この3つの事業を集中的に短期間で展開する」としているが、新会社がまず最初に取り組むのはDVDソフト事業だ。具体的には、TBSグループの持つコンテンツのDVD化を進める。

 CCC 代表取締役社長の増田宗昭氏は、国内外のテレビドラマや映画タイトルにおいて、DVD化がどの程度進んでいるかを比較し、「洋画では全タイトルの6割程度がDVD化されているにも関わらず、邦画では4割弱となっている」と指摘した。また同氏は、DVDとVHSのレンタル市場の分析結果を示し、洋画では2004年7月にDVDレンタルの数がVHSレンタルの数を上回ったが、邦画では1年遅れの2005年7月にやっとDVDレンタル数とVHSレンタル数が逆転したというデータから、「(DVD市場自体が拡大しているため)洋画レンタルの総数は右肩上がりに伸びている一方で、邦画レンタルの数は横ばい状態が続いている」と述べ、邦画のDVD化の遅れがレンタル市場にも影響を与えているとした。

 さらに、セルDVD市場についても増田氏は「ハリウッドの映像関連スタジオにおいては、セルDVDの売上業績が年々増加し、収益源の柱となっている」と指摘し、「日本のテレビ局においても、テレビでの放映のみならず、コンテンツをパッケージ化することで収益が伸びるはずだ。TBSにもハリウッドのようになってもらいたい」と、今回の新会社設立に至った背景を説明した。

 実はTBSでは、パッケージソフトの流通網を自社で抱えておらず、同社の人気DVDソフト「8時だヨ!全員集合」などは、フジテレビ系列のポニーキャニオンから販売されている。TCエンタテインメントの代表に就任予定の児玉氏は、「新会社では、これまで外部の企画会社に依頼していたパッケージソフトの流通においても中核的な役割を果たしたい」と述べた。

ドラマのネット配信は険しい道のり

 新会社がDVD事業の次に展開するのは、モバイルおよびPCへのコンテンツ配信事業で、その後共同販促およびマーケティングを手がけるとしている。

 民放テレビ局によるインターネットでのコンテンツ配信は、フジテレビジョンが7月15日からISPなどを通じて「2005ワールドグランプリ女子バレーボール 決勝ラウンド15試合」の配信をはじめたほか、日本テレビ放送網も10月より「第2日本テレビ(仮称)」と称して事業を本格化させるとしている。

 今回発表した新会社でも、モバイルやインターネットでのコンテンツ配信は事業内容に含まれているが、TBSが同社のモバイルサイトとして現在提供している「TBSエンタテインメント」にて、今後テレビ番組との連動企画の拡充や動画配信への対応、1セグメント放送に向けたビジネスモデルの構築を進めるとしたほかには、新会社としての具体的な事業や配信予定のコンテンツ内容について明らかにされていない。

 テレビドラマなどのインターネット配信について城所氏は、著作権関連の問題が複雑なため、「簡単には始められない」としている。例えば、テレビドラマの配信許諾を取得する場合、「古いドラマだと、バックグラウンドミュージックに使われた音楽が誰の作曲によるものなのか、全く見当がつかないケースもある。その場合は専門家に依頼して作曲者を探し出し、作曲者もしくは家族に連絡して許諾を得るための交渉に入る」と、城所氏は複雑なプロセスを説明、「音楽ひとつを取ってもこれほど複雑で、出演者や脚本家などの関係者全員に同様の許諾を取るにはコストが見合わない」と述べる。

 また、著作権問題だけでなく、課金方法やセキュリティ、コピー制限など、「課題はほかにもある」として、「ドラマのインターネット配信は、長期的には有望だが当面は難しい」と述べた。ただし、日本経済団体連合会がテレビドラマのインターネット配信における著作権使用料金について、著作権関係団体らと合意に至るなどの動きはあるため、「1〜2年のうちに状況は変わるだろう」と城所氏は業界団体への期待をのぞかせた。

 TBSは、フジテレビやテレビ朝日などと共同で、2002年にテレビ番組のネット配信事業を目的とした合弁会社トレソーラを設立している。現在目立った動きが見られないトレソーラだが、城所氏は「今後もトレソーラは存続する」としている。トレソーラと新会社におけるネットコンテンツ事業のすみ分けについて同氏は、「配信するコンテンツが両社で違ってくるだろう。トレソーラは他社との兼ね合いで配信するコンテンツを決めていく。新会社では、独自のコンテンツを用意する予定があるため、そういった独自コンテンツを中心に展開する」とした。

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